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30代直前の宇佐美貴史が語る“泥臭いスライディング”の意味とヒーロー観「家長くんは凄いなと」「理想に近いのはミュラー」
text by
下薗昌記Masaki Shimozono
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/12/03 17:04
宇佐美貴史、最大の魅力と言えばフィニッシャーとしての才覚だ。しかし年齢を経て引き出しを増やす姿もまた、サッカー選手らしい円熟とも言える
「自信のあるプレーはもちろんありますけど、スタイルが変わって行く時期、変えていかないと行けない時期だと思っています。その中で自分の理想に近いのは、ミュラーなんです。もちろん程遠いどころの話ではないですけど(笑)、ミュラーのプレーは凄いなと思いますね。彼を目標にするというより、今見ていて一番すごいと思うのがミュラー。スタイルをそのまま寄せるというよりは、欧州で一番見たい選手がミュラーというか」
代表は目指すべき場所だけど、今は遠く及ばない
そのミュラーは31歳だった今年5月、2年ぶりにドイツ代表に復帰しEUROでもプレーした。かつてプラチナ世代を牽引する存在として注目された宇佐美だが、現在の森保ジャパンの主力では同世代は柴崎岳や遠藤航。カタールを目指す日本代表に自らの名がないことに悔しさは――。
「いや、今の自分が出している結果なら、悔しいとも思わないですね。まだまだ遠く及ばないような状況です。もちろん、目指すべき場所ですけど、まずフォーカスを自分に向けて、自分をどう良くしていくかということにこだわってやる。そのプレーのクオリティとか結果で選んでもらえるものだと思うんです。代表に選ばれていないのが悔しいと思うことすら、今はおこがましい話かなと」
家長くんは凄いですよ、ヒガシくんもそう
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2014年の三冠イヤーにJリーグMVPに輝いた当時34歳の遠藤は「サッカーは年齢じゃない」との名言を残しているが、近年のJリーグでは2016年に中村憲剛が史上最年長となる36歳でMVPを獲得。そして宇佐美が小学生の頃から背中を見続けてきた“ヒーロー”もまた、30代で再ブレークを果たし、MVPを手にしている。川崎の大黒柱、家長昭博である。
「家長くんは凄いなと思いますね。ポジションは全く違いますけど、ヒガシ(東口順昭)くんもそうですよ。ヒガシくんは年々パフォーマンスを上げている感じもあるし、そういう選手が近くにいてくれることで、僕も可能性をより近く感じることができる。だからこのままでは終わらせへんと個人的に思っています。
この年齢で今のフィジカルコンディションの中で、どういうプレーができるのか。しっかりと向き合って、日々取り組んでいかないと家長くんやヒガシくんのようなパフォーマンスは出せない。本当により強く、フォーカスを自分に強く向ける必要があります」
2019年にガンバ大阪に復帰した当時、宇佐美はこう話していた。
「強いチームにはいい中堅がいる」