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「村上とか宮本が活躍した方が…」ヤクルト青木宣親が誰よりも鮮明に見据えていた“チームの立ち位置”《2年連続最下位からの日本一》
posted2021/11/30 17:03
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
JIJI PRESS
東京ヤクルトスワローズが……と言うより、青木宣親が日本一になったと知った時、真っ先に思い出したのは、あと1勝で世界一に届かなかったロイヤルズ時代の「あのシーン」だ。
2014年のワールドシリーズで、ジャイアンツに3勝4敗で敗れた第7戦の試合後、青木は日本メディアの取材を受けながら、言葉に詰まり、涙を流し、カメラを止めた……はずだった。
「泣いた? 違うでしょ。汗が目に入っただけだから」
彼がそう言い張ったのは2019年1月、ロサンゼルス郊外で村上宗隆や宮本丈、西浦直亨らと自主トレーニングをした時のことだ。本人がそう言うのだから、しょうがない。それ以上のことは野暮なので訊かなかった。代わりにスワローズの話になり、メディア公開日と同じ言葉を聞いた。
「ヤクルトで優勝したい。それしかないでしょ」
「ヤクルトで優勝したい。それだけ……それしかないでしょ」
当時、ヤクルトで優勝することだけが、彼に残された目標だというようなことを本コラムで書いた(青木宣親と若手4人の不思議な生活 参照)。今だから正直に告白するが、そんなに深く、考えて書いたわけじゃない。彼が日本球界に復帰した2018年、ヤクルトは前年の最下位から2位に躍進したのだから、「今年こそは優勝だ」と思うのが自然だ。
だが、青木はあの日、あの時、きっぱりとこう言った。
「去年、惜しかったからと言っても(優勝した広島と)少しの差だとは思っていない。去年は去年。べつに今年、2位からスタートするわけじゃないし。去年分かったのは、頑張ったら2位になるぐらいの実力はあるってことだけ。一昨年は最下位だったわけで、そんなに簡単に優勝できるなら、去年してますよ。本当の意味で強いのかどうかは今年、分かる。他のチームだって、ヤクルトに出来るんだったらって思っただろうし、ちょっと気を抜いたら、また最下位に戻ってしまうと思う」
分かるでしょ? という感じの彼に、「じゃあ、どうなったら本当の強さがチームに備わるのか?」と尋ねると、彼は即答した。
「上乗せが欲しいよね。そのためには若い選手の成長が必要。もちろん、僕らみたいなベテランも頑張らないとダメなんだけど、何年もやってる選手はある程度、計算できるし、逆に驚きっていうのがない。でも、村上とか宮本みたいな選手が活躍した方が、チーム全体の力の上乗せになる。そうじゃなきゃ、去年と同じ力しかないわけで、他のチームが頑張ったら2位にもなれない」