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青木宣親と若手4人の不思議な生活。
質問には答えても上下関係はなし。
posted2019/01/20 11:30
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Kyodo News
青空の下に、乾いた打球音が響き渡っていた。
冬でも温暖な気候のロサンゼルス郊外。とある小さな野球場での打撃練習でバットから快音を発していたのは青木宣親である。
つい2年前まで、メジャーリーグで「ノリ」と親しみを込めて呼ばれていた男だ。
「(フィットネス・)ジムでは結構ハードにトレーニングをやってるし、それはもう体に出てきている。身体も絞れてきたし、今はしっかり動ける体というか、下地を作る時だと思う」
精悍な表情がその証だった。「身体能力」至上主義の米国で行う専門的なフィジカル・トレーニング。一緒にいる若い選手たちが口を揃えて「今日のはヤバかった」というぐらい厳しい練習は、37歳には辛いのではないか――。
アメリカに買った家に集合して。
「体力は全然負けてないですね。いや、俺、結構行けるなと思う。ランニングしていてもトレーニングしていても、たぶん、俺が一番やれているかも」
トレードマークとも言える「破顔一笑」。だが、嘘を言ってるわけではないし、いわゆる「リップサービス」でもない。参加した4選手の中では「兄貴分」であり、かつては沖縄や宮崎でも行われていた青木の「自主トレ」の常連である上田剛史が、こう明かす。
「毎回思うことですけど、今の時点でもすごい成績を残しているにもかかわらず、常に前を向いてどん欲に高いところを目指しているというのをすごく感じる」
どん欲にこなす「自主トレ」。それを米国でやろうとした理由は、とても単純だった。
「家の近くでやりたいってのがまず、あったよね」と青木。
一昨年のオフに購入した米国における拠点=「家」。当時、米国のメディアが「リビングの屋根が開いて青空の下で寛げる」と勝手に報道した、西海岸独特の開放感あふれる豪邸だ。
東京の自宅に家族を残してきた青木は、そこで30歳の中堅外野手である上田剛史、昨季、遊撃の定位置を確保した27歳の西浦直亨、2年目で内野の一角を占めたい23歳の宮本丈、そして、18歳で三塁の定位置奪取を狙う村上宗隆、そして、青木の体を大学生の頃から見続け、二人三脚で「理想の打撃」を作り上げてきた専属トレーナーの原田雅章氏らとの「共同生活」をしている。