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「歴代12人だけの投手4冠」山本由伸でも《完全クリアできない7項目》 沢村賞は“現代野球の尺度に合ってない”のでは
posted2021/11/25 11:04
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Nanae Suzuki
11月22日、プロ野球で今年、最も活躍した先発投手に与えられる沢村賞の選考会があり、オリックスの山本由伸が選ばれた。これは大谷翔平のMVPと同じくらい《鉄板》だった。
あらためて沢村賞の基準をおさらいしておこう。
1)15勝以上、2)150奪三振以上、3)10完投以上、4)防御率2.50以下、5)200投球回以上、6)25登板以上、7)勝率6割以上。
最近はこの7項目に加えて、登板数に占めるQS数の比率も参考にすることになっている。QS(Quality Start)とは先発投手の最低限の責任であり、MLBの場合6イニング以上投げて自責点3以下となっているが、沢村賞では7イニング以上投げて自責点3以下となっている。
セ・パ両リーグでこの基準をできるだけ多くクリアした投手の中から1人が沢村賞に選ばれる。
山本由伸の圧倒的な成績が分かるクリア数
セ・パ両リーグの規定投球回数以上の投手で7項目のうち1項目以上をクリアしたのは17人だった。★はクリア数、%は先発登板数に占めるQS試合数の割合。
山本由伸(オ)★5
率1.39★/登26★/勝18★/勝率.783★/投回193.2/奪三206★/20QS/76.9%
柳裕也(中)★4
率2.20★/登26★/勝11/勝率.647★/投回172/奪三168★/14QS/53.8%
青柳晃洋(神)★3
率2.48★/登25★/勝13/勝率.684★/投回156.1/奪三104/12QS/48.0%
則本昂大(楽)★2
率3.17/登23/勝11/勝率.688★/投回144.2/奪三152★/9QS/39.1%
大瀬良大地(広)★1
率3.07/登23/勝10/勝率.667★/投回146.2/奪三102/13QS/56.5%
小笠原慎之介(中)★1
率3.64/登25★/勝8/勝率.444/投回143.1/奪三115/5QS/20.0%
九里亜蓮(広)★1
率3.81/登25★/勝13/勝率.591/投回149/奪三102/7QS/28.0%
戸郷翔征(巨)★1
率4.27/登26★/勝9/勝率.529/投回151.2/奪三138/7QS/26.9%
宮城大弥(オ)★1
率2.51/登23/勝13/勝率.765★/投回147/奪三131/10QS/43.5%
上沢直之(日)★1
率2.81/登24/勝12/勝率.667★/投回160.1/奪三135/13QS/54.2%
今井達也(西)★1
率3.30/登25★/勝8/勝率.500/投回158.1/奪三137/12QS/48.0%
石川柊太(ソ)★1
率3.40/登28★/勝6/勝率.400/投回156.1/奪三134/9QS/36.0%
加藤貴之(日)★1
率3.42/登25★/勝6/勝率.462/投回150/奪三102/7QS/28.0%
岸孝之(楽)★1
率3.44/登25★/勝9/勝率.474/投回149/奪三131/5QS/20.0%
小島和哉(ロ)★1
率3.76/登24/勝10/勝率.714★/投回146/奪三92/5QS/20.8%
高橋光成(西)★1
率3.78/登27★/勝11/勝率.550/投回173.2/奪三127/13QS/50.0%
松本航(西)★1
率3.79/登28★/勝10/勝率.556/投回149.2/奪三130/6QS/25.0%
7項目をすべてクリアした選手はいない。山本由伸は完投数、投球回数の2項目をクリアできなかったものの他の項目は水準に達し、その上にQSの%でもダントツの1位だった。
大野雄大、田中将大は1つもクリアできず
2位の中日、柳裕也は勝利数、完投数、投球回数の3項目をクリアできず、他の4項目をクリア。阪神の青柳晃洋は、防御率、登板数、勝率の3項目をクリアしている。他の選手の成績はぐっと下がる。今季、オリックスで山本由伸とともに左のエースとして大活躍した宮城大弥は勝率をクリアしただけだった。