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「歴代12人だけの投手4冠」山本由伸でも《完全クリアできない7項目》 沢村賞は“現代野球の尺度に合ってない”のでは 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/11/25 11:04

「歴代12人だけの投手4冠」山本由伸でも《完全クリアできない7項目》 沢村賞は“現代野球の尺度に合ってない”のでは<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

山本由伸は日本シリーズ第1戦の投球内容でも“普通”レベルなのだから恐ろしいスーパーエースである

 なお昨年の沢村賞投手である中日の大野雄大や、2回の沢村賞を誇る楽天の田中将大は1つも項目をクリアできなかった。同じく沢村賞2回の菅野智之は規定投球回数に達していない。

 山本由伸はパ・リーグの最多勝利(18)、最優秀防御率(1.39)、勝率第1位(.783)、最多奪三振(206)と主要4タイトルを独占した。

 投手4冠は、1937年春の巨人・沢村栄治が最初に達成した。以後の達成者は以下の通り。

 1938年秋:ヴィクトル・スタルヒン(巨人)、1943年:藤本英雄(巨人)、1954年:杉下茂(中日)、1959年:杉浦忠(南海)、1961年:稲尾和久(西鉄)、1980年:木田勇(日本ハム)、1981年:江川卓(巨人)、1990年:野茂英雄(近鉄)、1999年:上原浩治(巨人)、2006年:斉藤和巳(ソフトバンク)

 そして2021年の山本由伸(オリックス)と12人しか記録していない。7人が延べ11回しか記録していない打者の三冠王に匹敵するとも言われる、素晴らしい成績だ。

山本由伸でも“全クリアできない7項目”の制定は1982年

 しかし、そんな山本由伸でも沢村賞の7項目をすべてクリアすることはできなかった。

 現在の沢村賞の基準の7項目が制定されたのは、1982年のことだ。以後、40年で3回「該当者なし」があり、2003年は2人選出されたので、延べ38人が沢村賞に輝いたが、このうち7項目すべてをクリアしたのは以下の9人だけである。

 1982年:北別府学(広島)、1987年:桑田真澄(巨人)、1989年:斎藤雅樹(巨人)、1991年:佐々岡真司(広島)、1993年:今中慎二(中日)、2007年:ダルビッシュ有(日本ハム)、2009年:涌井秀章(西武)、2011年:田中将大(楽天)、2018年:菅野智之(巨人)

 7項目のハードルは年々高くなっている印象だ。

 特に10完投と200イニングは近年、極めて厳しくなっている。昭和の時代は130試合制が長く続いた。現在は143試合制だから、試合数は10%増えているが、先発投手の登板間隔は中4~5日から中6日になっている。

 先発投手のシーズン登板数を見ていくと1970年代は40試合台、1980年代でも30試合台だったが、現在は25試合前後となっている。仮に25試合すべて完投しても225イニングだ。

「先発とは完投するもの」の時代からの変容

 その上に、先発投手の投球回数も減っている。以前は「先発とは完投するもの」という通念があったが、今のプロ野球は先発投手だけでする競技ではない。セットアッパー、クローザーなどの救援投手と力を合わせて勝利を勝ち取るものになってきている。

 それをよく象徴しているのが、毎年、一軍の試合に出る投手の数だ。1970年から10年単位で、日本シリーズ優勝チームの一軍出場投手数の推移はこうなっている。

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