オリンピックへの道BACK NUMBER
「ロコさんがいたから強くなれた」4度目の五輪挑戦、代表決定戦に懸けたカーリング・吉村紗也香が惜敗直後に見せた表情とは
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJCA IDE
posted2021/09/19 11:03
ロコ・ソラーレの藤澤五月とは同じ北海道出身で同学年の吉村。代表決定戦に挑んだ他の7人と異なり、吉村にとっては初の五輪を目指した戦いだった
五輪出場経験のある船山、近江谷、小野寺に対し、オリンピックの舞台を知らない吉村は、以前はその境遇を重圧に感じていたこともあった。でも時間をかけ、それを振り払うと、スキップとしての力も示していった。
吉村、そしてチームの努力が成果となって現れたのが、2021年2月の日本選手権だった。悲願のオリンピック出場への可能性を残すには、この大会で優勝し、日本代表決定戦への出場権を獲得するほかない。この大会を優勝し、瀬戸際で踏みとどまり、道をつなげる。
そうして迎えたのが、代表決定戦だった。吉村、小野寺らのショットを中心にロコ・ソラーレに対抗し、北海道銀行は拮抗した勝負を繰り広げた。最後まで崩れることなく、対峙した姿には以前にも増したタフさがあった。
「(ロコ・ソラーレは)試合をする中で調子を上げて、しっかり指示されたところに石を置いてきました」
試合後、涙を流しつつ、吉村は5試合を通して上向きになったロコ・ソラーレの強さを認めた。
ライバルからの賛辞
ロコ・ソラーレの代表理事を務める本橋麻里から試合後にこう言葉をかけられた。
「ライバルがいなかったら、私たちもここまで強くなれなかった」
その言葉をひきつつ、吉村は言った。
「私たちもロコさんがいたから強くなれました。最後まで楽しくカーリングはできました」
敗れてなお、成長のあとをたしかに見せた。ライバルに勝つことを胸に、強くなった。
それは本橋の言葉の通り、ロコ・ソラーレにとっても同様だ。そして今回の5戦は、12月の世界最終予選への貴重な糧となる。競い合う中でつかんだ力とともに、それぞれのチームは、次なる目標へと進む。