水沼貴史のNice Middle!BACK NUMBER
冨安健洋の器用さは“泥沼”アーセナルの救世主に? 水沼貴史が期待するプレミア勢とのマッチアップとは
text by
水沼貴史Takashi Mizunuma
photograph byGetty Images
posted2021/09/10 17:00
アーセナルのユニフォーム姿でフォトセッションに応じる冨安健洋(22歳)。水沼氏が注目するマッチアップとは?
しかし、冨安はとても器用な選手です。センターバックだけでなく、イタリアではサイドバックとしても高い評価を受け、守備面だけでなくビルドアップ能力にも磨きがかかりました。右足だけでなく、左足の精度も高く、先日のW杯アジア最終予選・中国戦でも彼がいることで組み立ての質が変わりました。
さらにアーセナルがシティ戦で5バックを採用しましたが、最終ラインの変化にも柔軟に対応できることは冨安の強み。監督が代わったとしても、システムが変更になったとしても、ケガ人が出たとしても、むしろ冨安の器用さは今のチーム状況において際立つのでは、と見ています。
アーセナルのメンバーを見る限り、右サイドバックが冨安の定位置になりそうですね。元スペイン代表のベジェリンという実力者がチームを去り、明確なレギュラーがいないポジションです。
チャンバースはセンターバック起用が多く、イングランド代表経験もあるメイトランド・ナイルズは定着できてませんし、ベンフィカから両サイドをこなせる2有望株のタバレスを獲得しましたが、まだ少し時間がかかりそう。セドリク(・ソアレス)も今季のパフォーマンスはあまり良くない。チームとしても今は守備面の強度が課題なので、冨安は救世主的な立ち位置なのでしょう。
また、左サイドバックには攻撃の起点にもなれるティアニーが健在なので、やや左上がりのサッカーになることが多い。となると、右サイドバックは絞ったポジショニングでプレーすることが求められ、その点でも冨安との相性はいい。うまくフィットすればアーセナルの守備に安定感を生み出せると思いますよ。
味方を生かす、味方に生かされる
何より冨安は周りの選手の特徴をすぐ掴む能力が長けている。さらに周囲の選手によって自分がどう生かされるのかも、考えながらプレーできる頭の良さがあります。前線にはタレント揃いですから、イングランド代表DFベン・ホワイトやボランチのMFロコンガといった新戦力たちとコミュニケーションを図りながら守備を構築し、アーセナル復活の象徴となるような活躍を期待したいところです。