Jをめぐる冒険BACK NUMBER
風間フロンターレに憧れたからこそ… 小泉佳穂は「レッズを質の高いチームに」王者に“0-5の雪辱”を果たしてタイトルを
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/08/31 17:00
3月の対戦で小林悠とマッチアップする小泉佳穂。チーム力が向上している浦和にとって、ルヴァン杯での川崎との再戦は試金石となる
「浦和にリンクマンやポゼッションの出口となるタイプが少なかったのと、J2でたくさん試合に出て、そこで培ったものがJ1でも通じる部分が多くて。琉球の攻撃的なサッカースタイルの中で掴んだものもそうですし、連戦中のハードワークもそうですし。去年、一昨年の積み上げが、リカルドのサッカーに合うところ、J1でも通用するところが多くあった。だから、そんなに差を感じず順応できたんだと思います」
とはいえ、初のJ1挑戦で衝撃を受けたゲームがないわけではない。
それが、3月21日に行われた川崎戦だった。
3月の試合、前半40分までは浦和の優勢だった
ホームの埼玉スタジアムに前年王者を迎えた一戦は、40分まで浦和の優勢で進んだ。選手の立ち位置で相手を困らせるサッカーで川崎を押し込み、相手左サイドバックの旗手怜央に「何もさせてもらえなかった」と言わせるほどだった。
ところが、42分にワンチャンスを小林悠に仕留められると、後半開始からわずか8分間で立て続けに3ゴールを許し、終わってみれば0-5。王者の底力を見せつけられた。
「僕らが優勝する、個人として日本代表に入るためには」
試合後、小泉はショックを隠せずにいた。
「0-5という差がつきましたが、最後の質の差がそのまま出たと思います。失点も防ぎ方があるでしょうし、僕はトップ下をやっているので、僕自身と相手の脇坂(泰斗)選手や田中碧選手、小林悠選手との差がそのままスコアに出た。僕自身がチームを勝たせるんだという覚悟を持ち、シュートにしてもパスにしても、もっと数を増やし、質を高めていかなければいけないと思います」
だが、完敗のショックを振り払うように、小泉は気丈に語った。
「今日は日本で一番強いチームと戦いました。ですので、僕らが優勝する、もしくは僕個人として日本代表に入るためには、一番分かりやすい相手だったと思います。チームとしても個人としても距離があると感じましたが、努力次第で埋められる差だと思います。実際にどうやって差を埋めていくかというと、個人としては基礎技術のトレーニングしかありません。それから、僕個人としてチームの結果に責任を持つ、覚悟を持つ、そのためにシュートやパス、決定的なプレーのチャレンジをもっと増やしていくことが、チームを勝たせるためには大事だと思います」