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『ラストパス―引退を決断してからの5年間の記録―』中村憲剛が綴った最後の5年間。引退に込めた覚悟と「美しさ」。
text by
軍土門隼夫Hayao Gundomon
photograph bySports Graphic Number
posted2021/08/31 07:00
『ラストパス―引退を決断してからの5年間の記録―』中村憲剛著 KADOKAWA 1650円
2020年11月1日に行われた中村憲剛の引退発表会見は、誰にとってもまさしく青天の霹靂だった。左膝の前十字靱帯断裂の大怪我からやっと復帰し、前日には40歳の誕生日を自ら祝うバースデーゴールを決めていた。ようやくピッチに戻ってきて、まだまだやれると証明したばかりじゃないか。誰もがそう思った。もちろん僕も、心の底から驚いた。
阪神や京都の競馬場、栗東トレセンなど関西で競馬の取材の仕事が入ると、まずは合わせてガンバ大阪戦やヴィッセル神戸戦を観に行けないか検討する。そのくらいには熱心に川崎フロンターレを応援してきた。当然ホームゲームは全部行く。全部、目の前で見てきた。だからこそ、この引退のしかたには驚かされた。