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「彼はまだキッズのようだったから…」石川祐希に世界最高セッター・ブルーノ(ブラジル主将)が贈った言葉《バレー五輪秘話》
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byJMPA
posted2021/08/27 11:05
8月3日の準々決勝、日本-ブラジル戦後に座り込んで涙を流す石川祐希に声をかけたブラジル代表ブルーノ
「単純に悔しかったです。もちろんまだまだ課題はあったのですが、今大会非常にいいプレー、いいパフォーマンスを、僕だけじゃなくてチーム全員していたので、それでもこの結果になってしまったことが非常に悔しくて、ああいうふうに泣いてしまいました」
一方で、達成できたと感じていることについても言及した。
「初めてオリンピックの舞台でプレーさせていただいて、感謝の気持ちしかありません。個人的には、この舞台は恩返しや感謝の気持ちを伝える場だとずっと言っていて、少しでもコートの上でそれを表現できたのかなと思います」
「予選ラウンドでは試合ごとに成長していたと感じています。成長できていたからこそ、準々決勝を懸けた予選ラウンドの最終戦(イラン戦)で力を発揮できたと思います」
五輪での強豪との対戦で石川が感じたこと
ブラジル戦でブルーノとわたり合ったことについてはこう答えた。
「個人的にブルーノ選手と戦えたことは非常に嬉しいです。イランのマルーフ選手や、カナダのマール選手(スティーブン ティモシー・マール=ミラノ所属)選手のようなチームメートと、こういった特別な舞台で戦えることは、僕自身とても幸せなこと。そういう選手たちがもっと増えるように、僕もトップに登りつめていきたいと感じます」
話しているうちに、これからの全日本に対しての思いが次から次へと出てきた。
「僕自身、目標としていたところまでは達成できなかったので、正直悔しい。僕の実力が足りなかった。僕の責任だ。そう感じています。もっともっと僕がプレーヤーとしてもチームの柱としても成長しなければいけないと改めて感じました。まだまだだなと思っています。もっと強く、チームの支えになるようなキャプテンになっていけるように、これから努力していきたいです」
東京五輪では、その石川の背中を見てきた若い力が台頭した。日体大2年生の高橋藍はブラジル戦後の取材エリアで、石川が歩んできた道を追いかけたいかと聞かれ、うなずいた。
「その気持ちはもちろんあります。高さへの慣れという部分でも自分自身の成長に必ず繋がると思う。海外に行きたいという思いは、すごく強くあります」
西田有志は東京五輪の閉幕から間もなく、イタリア・セリエAのビーボ・バレンティアへの移籍を発表した。ブラジル戦後の取材エリアでは「発表までまってください」と言いながらも「冒険したいんです」と海外への意思を表明していた。
この後はすぐ、9月12日からアジア選手権が始まる。パリ五輪は3年後。次は開催国枠ではなく、予選を勝ち抜いて出場権をつかみ取らなければならない。簡単なことではないが、厳しい予選を戦いながら成長することで「メダル」を手にするための実力がついていくと考えれば楽しみではないか。
男子バレーは東京五輪から強くなった。いずれそう語られる日が来る。そのための日々は始まっている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。