バレーボールPRESSBACK NUMBER
西田有志が振り返る東京五輪ベスト8とブラジル戦の涙、愛着あるジェイテクトを離れイタリアへ「常識にとらわれたくない」
posted2021/08/12 17:03
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Itaru Chiba
「僕は楽しく人生を生きられれば、それが一番いいんです」
西田有志はそう笑って、また大きな一歩を踏み出す。
東京五輪で活躍した男子バレーボール日本代表の21歳のオポジットは、V.LEAGUE DIVISION1のジェイテクトSTINGSから、イタリア・セリエAのビーボ・ヴァレンティアへ移籍することを発表した。
記者会見では、「正直、自分がここまで成り上がるとは思ってなかった。1年を生きるのに必死で」と語った。
Vリーグデビューから3年
日本の男子バレー界では、高校卒業後、大学を経てからVリーグに進む選手がほとんどだが、西田は「大学に行ってからVリーグというのは、自分の中では遠回り。自分は常に挑戦したいので」と、海星高校(三重県)からジェイテクトに入団。内定選手だった高校3年の1月に、17歳でVリーグ史上最年少出場を果たすと、すぐにレギュラーに定着した。
その年、日本代表に初選出され、代表でもレギュラーに。代表2年目の2019年ワールドカップでは、日本の得点源として4位入賞の原動力となった。特に世界を驚かせたのがサーブだ。サウスポーから放たれる独特な回転のかかった強烈なサーブでエースを重ね、ベストサーバーに輝いた。
そして2021年夏、東京五輪に出場。予選ラウンドを突破し、29年ぶりとなる準々決勝進出を果たした。さらに次は、世界最高峰セリエAへの挑戦である。
イタリア、ポーランド、ドイツなどから数多くのオファーがある中、ファーストオポジットとして西田が必要だと熱烈なオファーをくれたビーボ・ヴァレンティアを選んだ。高校3年でVリーグデビューを果たしてからまだ3年半。西田の言葉を借りれば、見事な「成り上がり」だ。
持ち前の高い跳躍力とパワーだけでなく、自分の課題を冷静に見つめ、得点につなげる技のバリエーションや精度を年々高めてきたからこそのサクセスロードである。