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「持てる力は出し切った」が…攻めの采配で疲弊した選手を救えなかったか 「よくやった」で終わらずW杯でリベンジを《U-24日本代表》
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byJIJI PRESS
posted2021/08/07 11:10
メキシコに一矢を報いた三笘薫のゴール。本来の輝きを放った背番号11をもう少し長く……との思いもよぎる
その遠藤が、3失点すべてに絡んでしまったのは、あまりに残酷だった。が、おそらく、限界だったのだ。
極限状態に達していたのは、もちろん、遠藤だけではない。
「持てる力のすべてを出し切った」と振り返った堂安律は「0-2、0-3となってから、足一歩動かすのも苦しかったですけど、『自分が動かないとダメだ』って言い聞かせながら頑張ったつもりです」と自身の身体に鞭打っていたことを明かした。
吉田は「悔しいです。悔しいですけど、出し切りました。出し切ったけれど、また進むしかないですね」と前を向いた。
選手たちの誰もが歯を食いしばり、力を振り絞ってピッチに立ち続け、懸命に銅メダルに手を伸ばしていたのだ。
攻めの交代でピッチにパワーと勇気を送り込めなかったか
せめて、そんな選手たちを後押しするような、ピッチにパワーと勇気を送り込むような、悪い流れをガラッと変えるような、果敢なメンバーチェンジができなかったものだろうか。
3位決定戦というチームのラストマッチで、前半のうちに2点を先行されてしまった。流れと展開はこの上なく悪く、ピッチ上には明らかに普段のパフォーマンスを出せていない選手がいる。0-2で負けても0-5で負けても変わらないわけで、勝負に出ない理由はない。
今大会は通常の3人とは異なり、5人の選手交代が認められているのだ。ハーフタイムに3人入れ替えるなど、攻めの采配に打って出ても良かった。
ところが、左サイドハーフを相馬勇紀から旗手怜央に替えるだけにとどまり、とりたてて流れが変わらぬまま、トドメとなる3点目を決められてしまった。三笘と上田を送り出すのは、その4分後のことだった。
最後は采配力で銅メダルをもたらしてもらいたかった
「疲労があって、なかなか身体が動かないなかで、メキシコは試合巧者ぶりを発揮し、したたかに勝利した。そこは我々が今後、身に付けていかなければならない部分だと思う。フレッシュな状態で戦える親善試合ではなく、6試合を通して世界のトップ・トップとの厳しい戦いの中でこそ得られるものだと思うので、選手たちは、この悔しい経験を次につなげていかないといけない」
こうした森保一監督の言葉からは、厳しい戦い、苦しい状況を乗り越えてこそ成長につながるはずだという信念を感じなくもない。