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日本を離れて約14年…オシムが認める日本サッカーの現在地「プレーは悪くない。技術的に驚くほどの進歩だ」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2021/07/23 06:01
いまだ日本サッカーの未来を気にかけるオシムは、サッカーの進化を認めている様子(2013年撮影)
――技術的にです。
「それなら本当にいい。技術であるならば、チームの全員が同じ方向を向いているのだろう。素晴らしいことだ。日本人の身体は大きくないが、敏捷で闘争本能に溢れよく走る。それにさらなる技術の進歩が加われば、素晴らしいサッカーになる。あなたがたは素晴らしいサッカーを実践するためのすべてを備えている。素晴らしいスタジアムが全国にあって常に優れた試合を見ることができる。そんななかでさらに優れたチームが現れたのは本当に興味深い。東京に住んでいれば、いつでも面白い試合を見に行ける。3~4試合が同時におこなわれるから、そこから選べる。それもいい試合ばかりだ。日本人選手に加え、外国人も悪くない。そして日本人たちは今、ヨーロッパのクラブから求められている。彼らにそれだけの魅力があるからだ。よく走り戦う。規律もある。ヨーロッパではとても大事なことだ。
ここは金に溢れており、あらゆる選手がヨーロッパでプレーしたがっている。彼らを買うにはどのぐらいの金がかかるのか。選手の流出は日本サッカーにとっては残念なことだが、あなた方のレベルが高いからヨーロッパのクラブも日本人に関心を示す。あなた方がここまで積み重ねてきたことをさらに続けるべきだ。
五輪に関してはどうなっているのか。最終的な決断はなされたのか?」
ところで反町はどうしてる?
――それはまだですが、世論は今もさらに延期か中止を求めています。コロナも収束していない状況で、判断はとても難しいです(註:6月22日時点での会話)。
「ところで反町(康治)は今、どこで仕事をしているのか?」
――日本協会の技術委員長です。
「そうか。彼も進化したということだな」
――そう願いたいですが……。
「彼はサッカーが大好きだ。たくさん旅して多くの試合を見ている。それで見識を深めない方がおかしい」
――そうかも知れません。
「自分たちとは違ったサッカーに触れれば、何か感じるところはある。私が日本にいたころから、彼は人とは違うアイディアを持っていたしサッカーを愛していた。愛する気持ちがなければ、サッカーに身を捧げることはできない。時間やエネルギー、すべてをサッカーのために捧げる。そうでなければ進歩しない」