バレーボールPRESSBACK NUMBER
ヤンチャな少年時代を過ごした西田有志をつなぎ止めたバレーボール…走り続けた21歳の“休養期間”は吉と出る?《東京五輪》
text by
岩本勝暁Katsuaki Iwamoto
photograph byFIVB
posted2021/07/23 11:04
主将・石川祐希とともにチームで大きな期待を背負う西田有志。19年W杯で見せたような“爆発”を東京五輪の舞台でも見せられるか
これまで幾度となく言葉を交わしてきた。Vリーグ、天皇杯、黒鷲旗とジェイテクトのユニフォームを着てプレーした全ての公式戦を目の当たりにしてきた。
思い起こせば、「疲れた」「痛い」といったネガティブな言葉は一度も聞いたことがない。ボールを追いかけて広告ボードに体から突っ込んだときも、試合が終われば「余裕っす」とケロリとした表情で話した。どれだけハードな試合をしても、チームからファンサービスを頼まれれば「いいっすよ」と快く応じてきた。
その西田が、東京オリンピックに向けて強化を進める日本代表の戦列から離れざるを得なくなった。
5月8日の紅白戦で、右足首を捻挫。自力で立ち上がることもできず、フィリップ・ブランコーチらスタッフに抱えられてコートを去った。
「焦りはありません」
イタリアで開催されたバレーボールネーションズリーグ(VNL)には帯同したが、多くの時間をリハビリに費やした。
初めてコートに立ったのは、15戦のうち11戦目となる6月16日のポーランド戦だ。怪我から1カ月以上が過ぎていた。やや硬さがあったか、サーブを打つ際のトスが低いように見えた。ルーティンも少し変えていた。会場の広さや照明の明るさに合わせたものか、それとも試合勘を取り戻すためか。スタメンで入ったアメリカ戦は序盤こそ相手のブロックにかかったものの、中盤以降は修正し、最後は気持ちよくスパイクを決めていた。
聞きたいことはいくつもあった。
しかし残念ながら、VNLが終わってからオリンピックに入るまでの取材機会は大幅に縮小された。唯一実施されたオンライン取材も、記者の質問は一人一問に限定。深く掘り下げて聞くことはできなかったが、世情を踏まえれば致し方ない。
「怪我自体は軽いものでなかったが、だんだん良くなっているのは肌で感じています。スタッフからも、しっかり治してくれるという言葉をいただいた。焦りはありません」
バレーボール選手としてのキャリアを走り続けてきた男が、怪我から1カ月も跳ぶことを封印された。チームに対するファンの期待が高まる中、もしかしたら最大のボトルネックになるかもしれない。
ただ個人的にこの“休養期間”がオリンピック本番で吉と出ると踏んでいる。