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想像を遥かに超えたサービスエース。
19歳西田有志に、仲間も世界も慄く。
posted2019/10/18 19:00
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Kiyoshi Sakamoto/AFLO
この大会でスターになりたい。
堂々とそう言ってのけた19歳に、絶好の場面が巡って来た。
ワールドカップバレーボール、男子大会最終戦。カナダと日本が共に2セットずつを取り合い、迎えた最終セット。9-9の場面で、日本のサーバーは西田有志。
いつものようにコートの左サイドから、最も得意なコースへ向け、腕を振り抜く。レシーブしようとした選手が弾いたボールは、観客席まで飛び、10-9。両手でガッツポーズをしながら、コートの中央で西田が吼える。立て続けに2本、3本とサーブでポイントを重ねる西田を見て、誰もが思った。もしかしたら、最後もこのまま西田のサーブで勝ってしまうのではなかろうか、と。
予想は的中した。
いや、正確に言えば的中ではない。むしろ的中どころか、想像を遥かに上回った。
メンバーを代えて守備を固めたカナダに対し、お構いなし、とばかりに4本目のサービスエースでマッチポイントとすると、最後は得意のクロスではなく、ストレート。守備専門のリベロをも弾き飛ばし、15-9。
6本中5本のサービスエース。何ともはや、圧巻、と言うしかない最高のフィナーレ。
ベストオポジットに選出。
中垣内祐一監督は「すごいものを見せられた」と脱帽し、同じオポジットとして2007年から日本代表でプレーし、スタメン出場したカナダ戦で活躍を見せた清水邦広も、「あれはすごいっすよ」と笑い、手放しで称えた。
「あの状況で4本も5本も打てるのは、メンタルがものすごく強い証拠。ホント、世界ナンバーワンのサーブと言っても過言ではないし、世界ナンバーワンのオポジットです」
各ポジション、出場選手から7名が選出される個人賞。清水の言葉は現実となり、西田はベストオポジットに選出された。
目標としたメダル獲得には一歩届かず4位。だが、過去最多の8勝を挙げ、サーブランキングも1位。初出場で十分な結果を残した証ではあるのだが、ただ嬉しいでは終われない、と西田は言う。
「個人で賞をいただいたことはありがたいです。でも、いいところだけではなく悪いところも多かったし、そこをなくしていければチームが勝てた試合もあって、自分が足を引っ張った場面もたくさんある。この賞をもらえたことに満足はしていないので、次は(周りからも)賞をもらってよかった、と思われるプレーヤーになりたいです」