試合が行われたブニョドコルスタジアムのピッチはひどく劣悪で、ほとんど土のような状態。さらにキックオフ時の気温が37度。風も通りにくい建物構造になっているため、もっとも蒸し暑さを感じた中で始まった難しい条件での大一番だった。

　これまでの川崎ならば、こうした環境でも、自分たちのスタイルにこだわって内容を勝ちに結びつけようとする節があったかもしれない。

「そういうところも含めてACLだと」

　しかし、このACLでは違った。

　足場の悪さを考えて、ショートパスをつなぐことに固執するのではなく、ロングボールを使ったシンプルな組み立てで前線を生かしていく。つまり、いつもとは違う優先順位でサッカーを組み立てたのだ。指揮官の指示があったとはいえ、試合が始まってからのモードチェンジが思いの外スムーズだったことにも驚いたが、その秘訣は「マインド」だったと谷口彰悟は明かす。

「そういうところも含めてACLだと思っていたんです。（ACLの戦いは）こんな感じだという中で、自分たちのサッカーを出せなくても、いかに勝ちに持っていくのか。そこがACLの楽しさの1つでもある。そこをポジティブに捉えて、そのマインドでできたのかなと思います」

大邱FC戦では対応力の高さも見せつけた©AP/AFLO

　これは、ACL仕様の戦い方とマインドを川崎が身につけ始めてきたことも意味しているだろう。

谷口が語る“ACL仕様のマインドセット”

　その背景にあったのは何か。谷口は過去の大会での苦い経験と、ここまで国内で磨き続けた勝負強さによるものだと言葉を続けた。

「過去のACLでは、自分たちがやろうとしてことが出来なかった時に、それを勝ちに結び付けられないという試合をたくさんやってきました。自分たちの力が出せれば、自信持って戦って勝ちに持っていけると思いますが、そういう試合が出来なかった時の戦い方、何をしないといけないのか。そういう逃してはいけないポイントを、昨シーズンからよりこだわってやってきた。そういったものが生きたかなと思っています。これは本当に積み重ねのひとつだと思います」

　違う顔を見せて戦った川崎は、グループ最大のライバルであった大邱FCを、レアンドロ・ダミアンのハットトリックもあり3－1で撃破。5連勝で首位通過を決めると、若手主体で臨んだ最終節も4－0で完勝して、ウズベキスタンを後にした。

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