ラストマッチBACK NUMBER
<現役最終戦に秘めた思い(18)>佐藤寿人「ラストゴールか、チームの勝利か」
posted2021/07/14 08:00
'19年に古巣である千葉に復帰。'20年、現役最後のシーズンは10試合出場2得点
text by

鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph by
J.LEAGUE
2020.12.20
J2リーグ 第42節
成績
千葉 2-1 北九州(前半 1-1、後半 1-0)
◇
佐藤寿人は冬景色のなか、愛車のハンドルを握っていた。東京湾の東岸に臨むジェフユナイテッド千葉のクラブハウスへと向かう。見慣れた道を通って、ユニホームに着替え、ピッチに立つ。これまで何度となく繰り返してきた日曜日の午後が、この日は無性に名残惜しかった。
《それまで当たり前だったことが最後になるので……、試合までの、ひとつひとつの行動を噛み締めていました》
2020年12月20日、J2最終節・千葉対北九州。佐藤にとってプロとして719試合目の公式戦は、自身のラストゲームであった。
現役引退を決意したのは、およそ2カ月前だった。38歳を迎えるこのシーズンは出場機会が限られ、自身の存在意義であるゴールも2つにとどまっていた。
《プロとしてチームに貢献できていないのが決断の理由でした。まだやれると思いながらも、実際に結果は出せていませんでしたから……》
そして、最後の試合に臨むに当たって、佐藤の胸にあったのは、やはりゴールであった。
佐藤はJリーグ最多の通算220ゴールを挙げてきた。この国のプロサッカー選手の中で、最もネットを揺らす喜びを知っている男だ。サッカー選手でありたいからサッカーをやっているわけではなく、フォワードであるため、点を取るためにボールを蹴っていると、ずっと考えてきた。それほど、ゴールにこだわってきた。
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