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「後悔などあろうはずが」イチロー・藤沢周平の言葉と菊池雄星の自問自答 15歳で出会った“恩師”からの「まっすぐ立つ」の教えとは
text by
塩畑大輔Daisuke Shiohata
photograph byKyodo News
posted2021/07/15 17:02
2021年オールスターの舞台を味わった菊池雄星。地道な取り組みが実っていた
エンジン自体の出力効率を上げろ
地面反力。ゴルフ界でもよく使われるようになった言葉だ。
地面を蹴って生まれる反発力。これを身体の回転運動などに変換し、ボールにより大きな力を伝える。反発力が最大になるのは、まっすぐ地面を押せた時だ。運動の特性の範囲内で、力を伝える方向を可能な限り垂直に近づけたい。そのためには、運動を始める段階でまっすぐ立っておくことが大事になる。
足の力は腕の力の3倍、という表現をされることもある。
投球時の出力を最大にするためには、いかにうまく足を使って、大きな地面反力を生むかが問われる。1年かけて取り組んできた腕の振りの矯正も、もちろん大事ではある。ただそこは、あくまで身体とボールの接点の話。乗用車で言えば、ギア系統のようなものだろう。
エンジン自体の出力効率を上げろ。小島さんはそう言っていた。
「このオフすべてを費やすつもりで、まっすぐ立つということを見つめなおした方がいい」
ひときわ語気を強め、念を押した。
まっすぐ立つ、のプロを求めて回った
まっすぐ立つ、のプロを求めて。菊池はジャンルを問わず、教えを乞うて回った。
足で立つ、というのは人間を人間たらしめるものでもある。生体力学の世界。医療の世界。あらゆるところに、立つことについて突き詰めて考えている人はいた。
何人もの話を聞き、指導を受けてみて感じた。その道を極めているだけに、どの専門家の意見も説得力はある。
「どの人のお考えも素晴らしいんですよね。それだけに、指導を受ける上で大事なのは、僕に合っているかどうか、なのかなと」
菊池が特に強く興味を持ったのは、ある理学療法士の指導だった。