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女優・大林素子に聞く“芸能界のオリンピックは?”「私はまだ市民大会にも出られていないくらいの実感ですね」
text by
河崎環Tamaki Kawasaki
photograph byShigeki Yamamoto
posted2021/07/14 11:05
現役引退から25年が経った大林素子さん(54)
「そういうの、一番嫌な質問ですよね」と、大林は悪戯っぽく顔をしかめて、ゆっくりと言葉を探す。一瞬の間があって、「オリンピックが生きる材料だったから」と口を開いた。「オリンピックに出るというのが生きていく手段で、絶対に出るんだという思いだけで生きてきた」。
世界で1位を争う大会はオリンピックに限らない。でも、大林にとってそれは唯一無二の存在だ。
「オリンピックは頂点だから。ワールドカップも、世界選手権も、グラチャンもスーパーフォーも、それぞれ意味ある大会なんですけど、全く別もの。オリンピックを目指すという夢があったから、とりあえず生きながらえたんです、私は」
「私はアントワネットになりたかった」
コートをあとにして25年。だがこの人は今も戦っている。そして、幼い頃に願っていた通りに表現者となった。
大林の長身に見惚れた取材者が、「『ベルサイユのばら』のオスカルを演ったらとても似合うのに」と言うと、彼女はふっと笑った。「でもね、私はアントワネットになりたかったほうだから。もっと言うと、エリザベートを演りたかった。オスカルがやりたいと思える女の子だったら、こんなに悩んでいなかったんですよ」
大林素子の戦いは、人生への復讐は、たとえばいつか「グロテスクなエリザベート」を演じる、その日まで続くのだ。
(【初めから読む】大林素子54歳が明かす“バレーは生きるか死ぬか”「ボールはね、落としたら死ぬ、自分の寿命みたいな存在でした」へ)
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