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中学生で日本代表、狩野舞子は“期待の美少女エース”のころをなぜ「暗黒時代」と呼ぶのか【衝撃の“春高ポスター事件”】
posted2021/03/25 11:04
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph by
Shigeki Yamamoto
まだ春の訪れには少し早い2月下旬。ニットのロングカーディガンは長身には映えるが、見ているだけでも少々肌寒い。
「完全に(洋服を)読み間違えました」
正面や斜めを向き、カメラに笑顔を向ける。今でこそ、ごく自然なその光景も、“あの頃”は無理だった。狩野舞子はそう言って笑った。
「15歳から21、22歳頃までは完全に暗黒の時代でしたね。暗黒面でダース・ベイダーが出てくるんじゃないか、っていうぐらい(性格が)暗かったです」
2018年に現役引退。バレーボール選手ではなくなってから間もなく3年が過ぎる今、笑みを浮かべながらも「暗黒」と当時を振り返った。きっかけは高校時代の“春高ポスター事件”だ。
事件と書けば煽りすぎのように見えるが、決して大げさではない。それほど2006年の春高バレー本大会のポスターは衝撃的だった。
高校生では異例の“撮り下ろし”
右には男子の前年度優勝、深谷高校(埼玉)エースの八子大輔(現JTサンダーズ広島)。左には当時2年だった八王子実践高校の主将でエースの狩野の顔が並ぶ。現役高校生のプレーシーンを使ったものではなく、撮り下ろした写真でつくられた斬新すぎる構図だった。
しかもそのポスターが本大会よりも前に、東京都大会の予選会場である駒沢屋内球技場の至るところに貼られていた。自身の「顔」が、これから出場をかけて戦う大会の「顔」となっている通常なら考えられないような状況に、狩野は「さすがに困惑した」と笑いながら振り返る。
「びっくりしますよね。しかもこんなにどアップで(笑)。当時は取材や撮影があっても何に載るかはわからないまま受けていたので、ポスター撮影だったこともその日の練習が始まるまで知らなかった。直前の練習でめちゃくちゃ怒られて、微妙な顔で撮影したのはよく覚えています」