酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
記録で見る日米球界「ノーヒットノーラン最新事情」 大リーグでの異常発生と阪神・西純矢らの“無安打降板”に浮かぶもの
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byGetty Images
posted2021/05/24 17:01
マリナーズ戦でノーヒッターとなったタイガースのターンブル。ほどなくヤンキースのクルーバーも達成した
“卑怯者と思われないように”という機微があるのかも
MLBではノーヒットノーランや完全試合など投手の記録がかかっている試合で、バントを試みるのは卑怯だとされる。例えば2001年5月26日のこと。ダイヤモンドバックスのエース、カート・シリングはパドレス戦でノーヒット(完全試合ペース)を続けていたが、8回裏にバント安打を打たれた。このときは打者に大きな非難の声が上がった。
そうしたこともあって、先発投手がノーヒットのままで終盤を迎えると両チームのベンチは緊張感に包まれる。味方チームは「エラーしないでおこう」と緊張するが、相手チームの選手も同様だ。打者は当然、「ヒットを打って阻止してやるぞ」とは思うだろうが、同時に「卑怯者と思われないようにしよう」とも思うはずだ。
今年のノーヒットノーラン7例の最終回の相手チームの攻撃は、5例が三者凡退、1四球と1死球がそれぞれ1つ。あっさり達成している印象だ。
もしも打者・大谷が“その立場”になったとしたら
「アンリトゥン・ルール」については、スポーツマンシップと微妙に異なる部分があり、日本人から見れば首をかしげたくなるようなものもある。アメリカでも「古い価値観だ」という声が上がり始めているようだ。
筆者は、ノーヒットノーランを継続中の投手と、大谷翔平が終盤に対決するシーンを夢想したりする。今季の打者・大谷は、ホームランか三振か、時にバントヒットか、という状況だが――もし無安打継続のシチュエーションになった際、長い体を折り曲げてバントヒットを試みるのだろうか?
異能の選手・大谷翔平が、そんなことをすれば――「アンリトゥン・ルール」に対する大きな議論が巻き起こりそうだが、ちょっと見てみたい気がする。
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