スポーツ・インサイドアウトBACK NUMBER
大谷翔平と大リーグの怪物たち。規格外れの本塁打連発に、実況が思わず叫んだ「こいつにできないことはないのか!」
posted2021/05/22 11:03
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
これは凄い。開いた口がふさがらない。
大谷翔平が、肩よりも高い内角の速球を振り抜いて右翼席に叩き込んだ瞬間、私は呆気に取られてしまった。
5月17日、本拠地アナハイムで行われたエンジェルス対インディアンス戦の2回裏、大谷はメジャーリーグ全体でトップに立つ13号本塁打を放った。
4日間で3本の本塁打だ。3日前の5月14日、対レッドソックス戦でも驚きの一発があった。見送ればボールかと思われる外角の低い球をほとんど右手一本でバットに乗せ、左翼にそびえるグリーンモンスター越えをやってのけたのだ。
劇画的と呼びたくなるようなホームランが連発されている。オフシーズンの徹底した食事改善と下半身の筋力増強で身体が変わったとは聞いていたものの、ここまでのスープアップは並大抵のことではない。
大谷は翌日も打った。5戦で4本のホームラン。5月18日現在、本塁打数(14)、総塁打数(98)、長打数(26)、ISO(.361)が、大リーグ全体でトップだ。長打率(.632)も、ア・リーグのトップ。その他の部門でも、めざましい数字が並ぶ。
打点(33)はリーグ2位(ラファエル・デヴァースが34打点でトップ)、得点(32)はリーグ6位(ボー・ビシェットが34得点でトップ)。四球(9=85位タイ)が少ないので出塁率(.323=リーグ47位)は高くないが、それでもOPS(.956)がリーグ9位まで上がってきた。二塁打の数(11)はリーグ11位、盗塁数(6)はリーグ10位につけている。
ベーブ・ルースの野球革命
これだけ傑出した数字が並ぶと、歴史上名高い、あるいは歴史の闇に埋もれた超人的選手を連想したくなるのは当然のなりゆきだろう。なにしろ大谷は、「ピッチャーが本塁打王になる」可能性を秘めているのだ。
たとえばMLB.comには、マイナーリーグのクラスDとはいえ、1952年に1試合27奪三振(アウトすべてが三振)のノーヒッターを記録したロン・ネッチャイに関する記事が出ていた。ニューヨーク・タイムズは、ニグロリーグで投手と捕手を兼任し、「ダブル・デューティ」の綽名で知られたテッド・ラドクリフ(あのサッチェル・ペイジの友人。ペイジは開幕時41歳で大リーグに参入し、顔見世とはいえ58歳でもマウンドに登った伝説の投手だ)に言及した。