プレミアリーグの時間BACK NUMBER
「肉は切らせずに骨を断つ」プレミア対決を制しチェルシーは2度目のCL制覇なるか 2012年に通じる運命と相違点とは
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/05/16 17:01
プレミア対決となった今季のCL決勝。2度目の戴冠を狙うチェルシーに勝機はあるか
元チームメイトに対峙した経験豊富なアスピリクエタ
ヨーロピアンカップ時代から通算13回のCL優勝歴を誇るR・マドリーは、欧州における格上。相手のゴールマウスと前線にいたエデン・アザールとティボー・クルトワの前にも、2007年にはアリエン・ロッベンを引き抜かれた過去がある。
CL優勝争いの常連はリバプールを退けた前ラウンド(計3-1)でも、ホームでの3得点先勝とアウェイでのスコアレスドローを実現したように、180分間のゲームマネジメントに長けている。
左のウイングバックはランパードとの確執で事実上の戦力外だったアロンソが攻撃的なオプションとして再び戦力化されていたが、鍵はチルウェルが持つ攻守のバランス感覚という判断だ。逆サイドのアスピリクエタは、4バックがメインだったランパード時代は攻撃的なリース・ジェイムズの控えに甘んじていたが、3バックへの変更に伴い、普段は右ストッパーとしてレギュラーに返り咲いていた。
経験豊富なアスピリクエタの起用には、3バック右サイドのアンドレアス・クリステンセンとともに、第1レグでは30分間弱、第2レグでは約90分間対峙したアザールを、元チームメイトとしてよく理解しているという理由もあったに違いない。
初戦の前半10分過ぎにはアスピリクエタがクロスを放った。14分にクリスティアン・プリシッチがアウェイゴールを奪った10分後には、相手のゴール前でシュートを放つチルウェルの姿も見られた。リードはカリム・ベンゼマの鮮やかなボレーで帳消しにされたが、チェルシーは同じく監督交代によりスタメンに復帰したCBアントニオ・ルディガーが、89分にドリブルで上がってFKを奪うなど、全員が攻めの姿勢を貫いて第1レグ(1-1)を終えていた。
貢献度を高め始めた2人のドイツ人
トゥヘル体制下の通算24試合目にして、18試合目の無失点を記録したR・マドリーとのリターンマッチでは、準決勝のマン・オブ・ザ・マッチと言っていいエンゴロ・カンテが2得点に絡んだ。中盤深部の司令塔タイプとして重宝されるようになったジョルジーニョを相方に、守備範囲の広いボールハンターとしての本領を取り戻したボランチは、リーグ優勝の原動力となり、プレミア年間最優秀選手にも輝いた2017年に匹敵するほどの存在感を見せている。