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「肉は切らせずに骨を断つ」プレミア対決を制しチェルシーは2度目のCL制覇なるか 2012年に通じる運命と相違点とは
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/05/16 17:01
プレミア対決となった今季のCL決勝。2度目の戴冠を狙うチェルシーに勝機はあるか
CL決勝進出に王手をかけた先制点は、カイ・ハバーツのチップキックがバーに阻まれたリバウンドをティモ・ベルナーが頭で決めた、新戦力コンビによるフィニッシュだった。ランパード前監督が起用方法を決めあぐねていた2人のドイツ人だが、ハバーツは偽9番とセカンドトップ、ベルナーは1トップと2シャドーの1枚で貢献度を高め始めている。
勝利を決定的にした終盤の2点目は、輝きを増し続けるメイソン・マウントのゴール。22歳のMFが試合後に「5点ぐらい取れた」と言えば、指揮官も「相手に押されることなく追加点を目指してチャンスを作り続けたことが非常に大きい」と納得する完勝だった。
ポジティブなサッカーと自家製戦力というアイデンティティ
マウントに代表される「生え抜き色」は、前監督のレガシーとして踏襲したトゥヘルが讃えられるべき点であると同時に、かつてのチェルシーとの相違点だ。
前回CL決勝進出を決めたバルセロナ戦の2試合では、ベンチも含めてジョン・テリーが唯一のユース出身者だった。だが今回、準決勝ではピッチに立ったマウントとジェイムズの他、ベンチにも3人のアカデミー卒業生がいた。
2021年がCLでのチェルシー戴冠年となれば、2012年に「まぐれだったんだよ」とでも言うかのようにディマッテオの首を切ったロマン・アブラモビッチにとっても、2度目の優勝でありながら喜びは一入なのではないか?
ポジティブなサッカーと、複数名の自家製戦力というアイデンティティを持つチームによる欧州制覇こそが、ロシア人富豪オーナーの念願であり続けるのだから。
来たる5月29日の今季CL決勝は、シティに軍配が上がれば記念すべき初優勝となる。しかし、チェルシーも同じことが言える。不屈の精神力に加え、戦術力、攻撃力、ボール支配力でも互角以上に渡り合えるチームで勝ち取った、本格的な初のCL王座として。