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「ピッチには労働者も演技者もいらない」大木武vs安間貴義、師弟対決で響いた時間稼ぎする選手への怒声
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/05/13 17:01
ヴァンフォーレ甲府時代にタッグを組んだ大木監督と安間コーチ(写真は2006年)
岐阜にとって、もうひとつのマイナス材料は、新型コロナの影響だった。選手・家族の陽性判定を受け、4月1日から2週間チームは休止。活動再開の直後で、まだフィジカルが万全な状態まで戻っていないところに、延期になった2試合が立て続けに組み込まれ、難しいスケジュールを求められていた。
この1点が決勝点となり、アウェイ熊本が勝利。結果と内容の両方が揃わなくては納得しない大木にしては珍しく、試合後の会見では開口一番「良いゲームでした」と、今シーズンの3勝目を振り返った。
「ゲームに動きがあって、隙がなくチーム全体が連動してつながっていた。こういうゲームをいつもやれるようにしたい」
敗れた安間にしても「(コロナによる活動休止からの)再開後の3試合で、一番良いゲームだった。良い相手とアップダウンのある激しい試合ができた」と評価はしつつ、だからこそ「勝たなければいけなかった」と、再三の逸機を課題とした。
これもコロナの影響で、今回ばかりは試合終了後のサッカー談義はお預け。それでも久しぶりに敵味方に分かれての邂逅は、やはり刺激に富んでいた。
「試合中の、武さんの『熱量』がスゴかった。あらためて感じましたよ」(安間監督)
今シーズンのJ3は、上位2チームが自動昇格。リーグ戦のおよそ4分の1が終わった現時点で、岐阜、熊本の両チームとも、わずかな勝点差にひしめく上位グループにつけている。
「これ絶対、Jリーグが(意図的に日程を)仕組んだでしょ」と、安間は苦笑するのだが、じつはこのカードの再戦になる熊本のホームゲームは12月5日、J3リーグの最終節に予定されている。
この試合に勝ったほうがJ2昇格……もしかしたら、そんなシビれるシチュエーションで、最終戦を迎える可能性があるのだ。手の内も気心も知れた盟友が、極限の状況下で、どんな「エンタテインメント」を見せてくれるのか。当事者たちには申し訳ないが、ただただ楽しみでならない。