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Jリーグ226試合出場、31歳で引退の椋原健太…なぜジーンズメーカーに就職した?「裏地あったかパンツ」との衝撃の出会い
posted2021/05/13 06:00
text by
石倉利英Toshihide Ishikura
photograph by
Toshihide Ishikura
「このオフィスの、あの席に座りました。そのとき『裏地あったかパンツ』というジーンズをはかせてもらったんですよ」
2018年の出来事を、いまでも鮮明に記憶している。
「はいた瞬間、こんなに暖かくて、こんなに質のいい商品を、こんなに安く売っているのかと、ものすごい衝撃を受けました。ふと『こんな会社に就職できたらいいな』と思ったことを、よく覚えています」
FC東京U-18から2008年にトップチームに昇格し、セレッソ大阪、サンフレッチェ広島、ファジアーノ岡山でもプレー。計13年間のプロキャリアを経て昨季限りで現役を引退した椋原健太さんは、3年前に訪問したオフィスの、当時座った来客用の席の横に自分のデスクを構え、今年2月から会社員として働いている。
岡山市に本社を置く株式会社アン・ドゥー(un.deux)は、カジュアル衣料の製造・販売を手がける会社。『ファッションセンターしまむら』などと取引があり、代表取締役の中村二郎氏がFC東京とつながりがあった縁で、11年からファジアーノのユニフォームスポンサー(背中部分)を務めている。
椋原さんはファジアーノ加入1年目に、スポンサー企業に選手が足を運ぶイベントでアン・ドゥー本社を訪問した。はいて驚き、「家に帰ったら、すぐに奥さんと『しまむら』まで買いに行った」というジーンズはその後、ただのお気に入りアイテムではなく、「僕の世界を変えてくれたジーンズ」になる。
31歳で現役引退「迷いはなかった」
ファジアーノとの契約満了が発表されたのは昨年12月3日で、同31日に現役引退を発表。在籍3年間でJ2リーグ98試合、昨季も42試合中36試合に出場した実績の持ち主が、31歳の若さで引退を決めたのは意外だったが、11月に契約満了を伝えられる前から、心は引退に傾いていたという。
「代理人(仲介人)から情報を聞いていたこともあり、少し前から将来について考えていました。大好きで、家族も住み慣れている岡山を離れることと、新しい環境でサッカーを続けることを天秤にかけたら、迷いはなかったです」