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グループLINEでスタメン落ちを知らされ…「3番・梶谷隆幸」実現までの舞台裏 巨人軍監督室で原監督とサシで話したこととは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2021/04/15 11:20
14日中日戦の3回、2ランホームランを放った巨人の3番・梶谷
梶谷が絞り出すように語った一言とは?
「率直にいま、(先発を外れることを)どう思っている?」
そこで梶谷が絞り出すように語ったのが「試合に出たいです」という一言だった。
「ヨシッ、分かった!」
その言葉を聞き、そう語る顔を見て原監督は、その瞬間に梶谷を先発で使う決断をしたのだという。
「亀ちゃんもああいう人間だから、先発を外れてもらう話をしたら、すぐに僕の意図を理解してくれた。コーチは『(梶谷を)何番で使いますか?』って聞いてきたから、『そのまま3番でいこう!』って言いました」
こんな紆余曲折を経てたどり着いたのが、あの日のオーダーだったのである。
そしてその中日戦で「3番・梶谷」のバットが、いきなり快音を発した。
14日には右中間に2号2ランを放った
初回に巡ってきた無死一、三塁のチャンスで左の大野からセンターに先制タイムリー。さらに3回にも中前安打を放って今季初のマルチ安打を記録した。翌14日の同カードでは、3回に3点を奪ってなお1死二塁のチャンスに、中日先発の勝野昌慶投手の143kmのストレートを弾き返して右中間に2号2ランを放った。
原監督の“3番抜擢”を、自らのバットで綺麗に完結させてみせたのである。
「昨日くらいからね、非常にこう、少し吹っ切れたところもあるように見えますね」
本塁打を放った14日の試合後のインタビューで語った原監督は、梶谷の現状をこう分析する。
「今日は練習でも非常に良かったし、やはり練習の形がしっかりしていれば、いい結果も出てきますね」
復活への手応えを感じているのだ。
フリーエージェントで巨人移籍1年目に、いきなり目の前に突きつけられたスタメン落ちという現実。ただ、その現実に葛藤し、もがいてもがいた梶谷は、最後に「試合に出たい」という一言を絞り出した。
その一言が復活へと踏み出す一歩へと繋がっていったのである。
これが不可思議にも思えた梶谷“3番抜擢”の舞台裏だった。
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