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釜本邦茂77歳に “日本史上最高ストライカー”に「釜本2世と言える選手はいましたか?」と聞いてみたら……
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2021/04/15 11:02
77回目の誕生日を迎えた釜本邦茂
「突破のエリアでまだ、つなぎをやってる選手が多いよね。ゴールまで30メートルのところは、ひとり外したらもうシュートなんよ。そういう意識がない。30メートルからなら、誰でも狙えると思う。練習すれば狙えるようになる。現役時代の僕は『アイツは練習してない』って言われたもんだけど、人前でしなかっただけ。仕事をしながらサッカーをしていたアマチュアの僕らでさえ、個人で練習する時間を作っていた。プロのJリーガーにできないわけはないでしょ。とにかく最後のエリアに入ったら、最後までやり切らないと。それはFWだけでなく、MFもそう。メッシは2人いようが3人いようが前へいく。だから点が取れる。ひとつのプレーが次につながる」
アタッキングサードでの慎重なつなぎは、「ボールを大切にする」という意識の表われとしてもとらえられる。釜本はちょっと不思議そうな表情で言う。
「それなら、ボールを持って帰ればええ」
ここで紹介した釜本の言葉は、09年3月の取材で聞いたものだ。10年以上が経ってもなお、日本サッカーに当てはまるところがあるだろう。
「釜本2世と言える選手はいましたか?」と聞くと……
取材ではこんな質問もした。
釜本2世と呼ばれた選手はこれまでにたくさんいたが、自身が後継者だと思える選手はいたか──。
釜本は笑いながら、迷いを感じさせずに答えた。
「いないね」
これもまた、21年現在の日本サッカーに当てはまる現実だ。釜本邦茂というフットボーラーは、それぐらいズバ抜けていたのである。