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松島幸太朗がヨーロッパ最高峰の舞台でベスト8に導く“劇的トライ” 英紙も唖然「ワスプスから勝利を奪い取った」
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2021/04/05 11:01
欧州王者を決めるハイネケン・チャンピオンズカップ、ワスプス戦で逆転勝利に貢献した松島。試合終了間際の劇的なトライは圧巻だった
話を試合に戻そう。
この日、ワスプスとアウェーゲームを戦ったクレルモンは、試合開始早々に先制トライを許し、終始、追いかける展開が続いていた。前半はホーム・ワスプスに約7割のポゼッションを保たれ、14-20とワスプスの6点リードで試合を折り返している。
後半、クレルモンは早速チャンスを得た。敵陣ペナルティーを獲得し、タッチキックを選択。コーチ陣は点差を縮めるためにゴールキックを指差すなか、選手たちはトライを奪いに行く選択をしたのだ。しかし、このマイボールのラインアウトを失ったクレルモンは、試合の流れを相手に与えてしまった。新加入の松島に限らず、一発の個人技で勝負を決める飛び道具が揃うクレルモンの自信が、悪い方向に出た結果となった。
それでも、粘るクレルモンは、試合の終盤でも果敢にリスキーなオフロードパスを次々と放った。2007年大会で優勝を経験する名門・ワスプスが堅いディフェンスを保ち続けるなか、クレルモンはフェーズを重ね、トライゾーンまで迫っていく――。残り20秒で得たペナルティーから徐々にトライゾーンに近づいていくと、最後に守備網をかいくぐったのが松島のランだった。これでクレルモンのベスト8進出が決まった。
「悪い時に“何とか”勝てるチーム」
アタックで試合を支配するという信条を持つクレルモンとしては、この日の出来はあまり良くなかった。だが、「調子の悪い時に“何とか”勝てるチームは、本当に強いチームだ」という表現があるように、その中で「結果」を残せたことは松島にとっても大きい。昨年12月に行われた今大会の予選リーグ開幕戦、プレミアリーグのブリストルを相手にハットトリックを決めているが、今回のトライで「Matsushima」の名は、欧州のラグビー界に、さらに深く刻みつけられたことだろう。
英国・ガーディアン紙の「松島がワスプスからチャンピオンズカップの勝利を奪い取った」というレポートが何よりの証拠だろう。
最後の逆転コンバージョンゴールを決めたカミーユ・ロペス(SO)など、役者が揃ったチームと松島のプレースタイルは相性抜群。今後、松島が欧州の大舞台でどんなプレーを見せるか。そしてクレルモンを欧州王者に導けるか。2023年W杯へ向けて、着実にステップアップする「Matsushima」から目が離せない。
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