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松島幸太朗がヨーロッパ最高峰の舞台でベスト8に導く“劇的トライ” 英紙も唖然「ワスプスから勝利を奪い取った」
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byGetty Images
posted2021/04/05 11:01
欧州王者を決めるハイネケン・チャンピオンズカップ、ワスプス戦で逆転勝利に貢献した松島。試合終了間際の劇的なトライは圧巻だった
欧州トップクラスのレベルに位置するクレルモンで、松島はすでに不動のレギュラーの座を確保している。日本のファンがトップリーグやスーパーラグビーで見てきたような鋭いステップ、一瞬で相手を抜き去るスピードはフランスの観衆たちも虜にしているようだ。
フランスにやってきた松島は、世界から集まる巨漢選手たちを相手に戦うために、体重増加に励んだ。移籍後、体重は6、7キロ増えたそうだが、ここで少し身体が重過ぎると感じたという。2週間ほど前のインタビューに答えた松島は、リラックスした表情で体調管理についてこう語っている。
「ここから、2キロくらい落とそうと思っています。肉体面と精神面のバランスを上手く整え、ここでの戦いに合った選手になるよう頑張っています。上手くいくよう、調整していきます」
ワスプス戦の同点トライでは、切れ味とともにタックラーを引きずる足腰の強さを披露。フィジカル強化の成果は着実に現れていると言えるだろう。
アゼマHCからの信頼も厚い
松島はもともと、攻撃の駒としての特徴を持つ選手だ。攻撃に関しては移籍直後からいいプレーを見せていたが、ポジションは守備の要としての役割もあるFB。最初の数試合では守備で連係の悪さを露呈し、トライを献上したことで、その後はWTBで使われる試合もあった。
だが、意欲的にフランス語の習得にも励み、グラウンドを離れてもチームメイトたちと楽しく過ごした松島は、徐々に連係面の課題を克服しつつある。2014年からクレルモンを率いるフランク・アゼマHCも、今では安心してFBとしてスタメン起用し続けている。
とはいえ、欧州ではまだまだ軽量級の選手。身長も178センチと小柄。それだけにTOP14の試合でも、松島目掛けてキックを放ち、囲むようにチェイスが走るという戦術がよく見受けられる。背の高い選手と空中戦で競わせるためにハイパントキックを多用される機会も多い。
だが、こうした厳しい状況で目立たずともキッチリとした“仕事”もこなす松島は、確実にチームの信頼をつかんでいる。ボールを持って走り出すと、あっという間に相手を抜き去る松島のカウンターアタックは、世界にとっても脅威だ。