猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックスのスカウト長は“元ドラ11”の苦労人…高校生の暴投にも「楽しみでしかたがない」、NPB初の女性スカウトも抜擢!
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2021/04/03 11:01
3失点と苦しんだ大阪桐蔭の“右のエース”関戸。それを見た牧田氏は意外な言葉を残していた
昨年、NPB初の女性スカウトを誕生させたのも牧田だった。オリックスでジュニアチームの指導や普及活動を担当していた、2008年北京五輪のソフトボール金メダリスト・乾絵美を、ぜひスカウトにと、上層部を説得し、本人を口説いた。
「昭和は男性の時代。平成は男女平等。令和は、女性の時代になると思ったんですよ」
今でこそ、時流に乗った言葉のように聞こえるかもしれないが、牧田は以前から「令和は女性が中心になるんじゃないかという、僕の勝手な未来像がある」と話していた。
2020年は東京五輪が開催予定だったことも頭にあった。
「オリックスは近年Bクラスで、なかなか勝ちきれない。もちろん彼女にすべてを託すわけではないんですけども、僕はすごく、空気や縁といったものを大事にしたいと思っていて、日本一じゃなく、世界一を獲った人をスカウトに入れて、まずこのスカウトグループを日本のトップにしたいと。金メダリストの話を聞きたかったし、その視点をスカウティングに反映させてもらえればと思いました。
僕にとっても乾が必要でした。乾に噛みつかれることが大事なことだと。男同士だと、僕に噛みつく人ってたぶん誰もいないんですよ。僕が何を言っても、そうですよね、となる。でも彼女がまったく違う発想を持って、違う角度で僕を見たときに、僕をつついてくると思うんです。そういう人が確実に必要。やっぱり十人十色が大事ですから」
目先ではなく、未来を
選手からスカウトに転身して13年になる。あえて人と違うことをしようとしているわけではないが、これだと思うことを、ぶれずに貫き通してきた。
大事にしているのは、「目先ではなく、未来をどう変えていくかという発想」。
目に見える変化に至るには時間がかかっても、近年のオリックスのドラフトや牧田の取り組みは、確実に期待感を膨らませてくれている。
【前回を見る】NPB初!女性スカウトが見る「立ち姿」とは?《北京五輪の金メダリスト》