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オリックスのスカウト長は“元ドラ11”の苦労人…高校生の暴投にも「楽しみでしかたがない」、NPB初の女性スカウトも抜擢!
posted2021/04/03 11:01
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
KYODO
2年ぶりに開催されたセンバツは、東海大相模の優勝で幕を閉じた。大会中、球場で視察していたプロのスカウト陣に選手の評価を聞く中で、「そんな見方もあるのか」と驚かされたスカウトがいた。
オリックスのスカウト陣を束ねる牧田勝吾編成部副部長だ。
大会4日目の第2試合で智弁学園に敗れた大阪桐蔭の投手陣について話を聞いた時のこと。大阪桐蔭の最速154キロ右腕・関戸康介は、2番手として5回からマウンドに上がったが、捕手がまったく届かないほど極端にストレートが抜けるなど、1回1/3で4暴投と荒れていた。
スカウト陣からは不安視する声も聞かれたが、牧田はこう言った。
「抜けてしまうボールでワイルドピッチしてしまったけど、あそこはじゃあ、指にかかっていたら、どんなボールが投げられたんだろう?って思いますね」
ニコニコしながら続ける。
「絵が描けるか、描けないか」
「離す位置がちょっと早かったということは、下半身の粘りが足りないんだと思いますが、リリースする位置をちょっと我慢して前で投げられて、あれがアウトコースに決まれば、すごいボールだったのかな、と思うと、楽しみでしかたがない。だから簡単にリストからは消したくない。
彼らにとっては“今”ではないので。ポテンシャルの高さは誰もが感じていますし、伸びしろを期待しています。持っているものを、今回はただ出せなかったというだけ。それを出せる確率を上げるために、これから夏や将来に向けて、自分を磨いていく1つの材料になったと思えたらプラスなのかなと思います。
僕からすれば、こういうパフォーマンスも、そりゃ高校生だからするよなって。そう捉えれば、別に評価としてどうこうというのはないですし、彼らが今後、こういうトレーニングをして、ここをちょっと修正できたら、こんなピッチャーになるな、という絵が描けるか描けないか。それが我々の仕事です」
仏様のような牧田の柔和な笑顔からは、球児への心からのエールが伝わってくる。