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18歳の松井秀喜「落としたことを後悔させてやりますよ」…二軍落ち、秋広優人18歳も“圧倒的な数字”を残せるか
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/19 17:03
17日の中日戦、横っ飛びで一、二塁間の当たりを好捕した秋広。2m2cmの長身ながら守備でも俊敏な動きを見せる
当時の新聞では、この時の松井さんのセリフが「後悔させるように頑張ります」と伝えられている。しかしこれは当時の松井番の若い記者たちがあまりに生意気な語り口に“首脳陣批判”と曲解されることを慮って忖度。それで最後に「頑張ります」と付け足して、少し穏やかな言葉にしたという話を聞いた。だが、実際はあの松井さんが珍しく感情を露わにして、不満を口にしていたのだった。
4月の二軍戦で12試合で打率3割7分5厘の4本塁打
「落とされても当然の成績だったんですけどね。でもやっぱり悔しかった。だからあんな生意気なことを言ったんでしょうね」
後に本人が“捨て台詞”を振り返った通りに、この時の松井さんのオープン戦の成績は、今年の秋広より深刻。打率9分4厘で三振は12球団ワーストの20個。
特に左投手に全くタイミングが取れずに、長嶋監督が断を下すのも当然の内容だった訳である。
だが、結果的にはこの二軍落ちが、松井さんにとっては将来への糧となった。
二軍落ちした松井さんは、イースタンリーグの開幕戦で公式戦1号を放つと、4月の二軍戦では12試合で打率3割7分5厘の4本塁打と打ちまくったのだ。
そして5月1日には一軍に昇格し、いきなり初安打と初打点をマーク。翌2日のヤクルト戦では高津臣吾投手(現ヤクルト監督)からプロ1号となる本塁打を放った。そこから日米通算507本塁打への第一歩を歩み出す訳である。
そんな松井さんが自分のファーム落ちを振り返って、こんなことを言っていたことがある。
「オレは秋広も打つと思うよ」
「下に落ちても、絶対にすぐに這い上がって見せるんだっていう気持ちだけは失わなかった。いま思うと一軍と二軍ではやっぱり全てが違う。一軍で活躍するためには、二軍で圧倒的な数字を残せなければダメだと思います」