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「アジア人はナメられてるから…」スペイン移住9年、元ヴェルディ46歳石塚啓次は19歳久保建英をどう見ている?
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byJ.LEAGUE/Daisuke Nakashima
posted2021/02/20 17:06
94年ヴェルディ川崎時代の石塚(左)と2019年バルセロナでの石塚
「まず、(活躍するには)しゃべれなダメでしょうね。言葉ができてナンボっていうか。その点で久保選手はほぼネイティブやし、スゴい。あと、いちばんリーガにハマってるのは乾選手かな。彼が(17年に)カンプ・ノウでバルサから2点取った試合は、偶然スタジアムで観てたけど、あそこで日本人が点を決めるなんて想像できひんかったからね。
エイバルはバスク地方の田舎のクラブで、ある意味でスペインっぽくはないところがいいのかも。バスクの人は、一般的なスペイン人に比べると他人のことを考えたり、真面目に働くイメージがあるし。(18年に)ベティスに行ったときは難しかったみたいやけど、(ベティスの本拠地)セビージャはバリバリのスペインって感じの場所やから。ああいうところで混ざってやるのは大変やと思う。サッカーに限らず、いまだにアジア人は舐められているし、人として見下されるようなところがあるからね」
「日本は民放でサッカーやった方がいい」
石塚が現役として元気だった90年代、Jリーグはテレビの地上波でも頻繁に放送されていたが、いつからかほとんどの中継が有料チャンネルでの放送となり、サッカー好き以外の人の目に触れる機会は著しく減少した。そうしたことが日本にサッカーが文化として根付かず、いまひとつ成長しきれない理由ではないかという。
「スペインリーグも放送はほぼ有料チャンネルやけど、日本とはサッカーの歴史が違うから。日本の場合は民放でやった方がサッカー知らん人も見るやろし、その方がサッカー選手の地位も確立できると思うねんけどね。いまはたぶん普通の人は、Jリーガーが街を歩いていてもわからんでしょ。昔はヴェルディの選手がようとんねるずのバラエティ番組に出てノリさん(木梨憲武)らと一緒にサッカーとかしてたから、近所の定食屋のオバちゃんだって『なんか、見たことある』ってなってた。どこかに遊びに行ってもワーッて騒がれて、国民的スターじゃないけど、そやから頑張ろうってモチベーションになった選手はいっぱいいたと思う。
いまは興味のある人しか見てない。でも、日本サッカーの底上げを考えれば、サッカー好きじゃないやつをどれだけ巻き込むかって重要ちゃうかな。それでこそ文化としても広がっていくような気がするねんけどね」
最後に石塚にとってサッカーとは何かと聞くと、趣味かな、と笑った。
「ただ好きなスポーツであって、それが仕事になったというやつ。で、仕事としては終わったけど、いまだにやっているということ。そうとしか言いようがない。飲食業は別に好きちゃうし、サッカーをもっとやれていたらって思いはあるよ」
(【初回を読む】「ラーメン屋のほうが儲かったかも」“ヴェルディ川崎の天才”石塚啓次46歳、スペイン移住の厳しさを語る へ)