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堂安律がビーレフェルトでPKを任されるほどに信頼される2つの理由 “総予算最下位クラブ”での理想とは
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byGetty Images
posted2021/02/19 11:03
1月10日のヘルタ・ベルリン戦でのビーレフェルト・堂安律。今季の更なる活躍が未来につながっていく
選手の総年俸はバイエルンの24分の1?
最後に、ビーレフェルトの現状について触れておく。
昨シーズンは遠藤航のいる名門シュツットガルトをおさえて2部で優勝したのだが、チームの総予算は今季の1部のなかで他を引き離して最下位に沈む。
以下は昨シーズンの推定額ではあるが、選手の総年俸は首位バイエルンの3億1202万ユーロ(約400億円)のわずか24分の1となる1320万9000ユーロ(約17億円)だ。
そんなチームが、丁寧にパスをつないでいくというサッカーで11年ぶりに1部で戦いに挑んでいる。
現在の順位は、入替え戦に回る16位。ただ、1試合消化が少ないにもかかわらず、1つ上の15位ヘルタと勝ち点差はない。
面白いのは、こんなデータだ。
現在の順位表の上半分にいるチームとの対戦成績: 2分9敗
現在の順位表の下半分にいるチーム相手の成績: 5勝1分3敗
リーグ上位クラブとの戦いでは力負けをする。ただ、中位以下のチームとの試合ではチームの取り組むサッカーの有効性を証明するかのように、勝ち越しているのだ。
バイエルンとのシーズン前半戦での対戦では1-4で返り討ちにあったが、ハンス・ディーター・フリック監督もエースのロベルト・レバンドフスキも「ビーレフェルトの戦い方は素晴らしい」と語ったほど。戦い方が“ブレた”と言える試合は、5バックをキックオフ時から採用して0-2で敗れた10月31日のドルトムント戦くらいだ。
移籍金の支払いには保守的に
昇格したばかりで、予算も最少。それなのに、ブンデスリーガ1部のチームと真っ向からぶつかる。そんな興味深いチームで堂安が大きな期待と役割を背負っているという点は、もう少し評価されてもいいかもしれない。
なお、現在の堂安はPSVアイントホーフェンから今シーズン終了後までのレンタル移籍中の身だ。規定額を支払えば買い取れる完全移籍のオプションもついていると言われるが、権利を行使するためには550万ユーロが必要とみられている(なお、フローニンゲンからPSVに移籍したときの移籍金は750万ユーロ)。
ただ、ビーレフェルトはお金がない。今季はユースからの昇格と他クラブへのレンタル移籍を終えて戻ってきた選手を除き10選手を獲得しているが、移籍金を支払って獲得した選手は1人もおらず、そのうちの5人がレンタル移籍でやってきた選手だ。
だから、クラブの経営部門責任者であるマルクス・レイェクはこう話している。
「我々は保守的に動く。堂安の完全移籍に必要不可欠な移籍金については、“今以上の何か”が起こらなければ、払うことはおろか、払おうとする意志さえ持てないものだ。ただ、この先にクリエイティブな可能性がもたらされることはありえるが……」