プロ野球PRESSBACK NUMBER

田中将大「比べられても仕方ない。宿命だと」 プロ初の斎藤佑樹戦で完投勝利も…9回2死、自分に怒ったワケ 

text by

間淳

間淳Jun Aida

PROFILE

photograph byJIJI PRESS

posted2021/01/29 17:02

田中将大「比べられても仕方ない。宿命だと」 プロ初の斎藤佑樹戦で完投勝利も…9回2死、自分に怒ったワケ<Number Web> photograph by JIJI PRESS

斎藤佑樹(左)とのプロ初の投げ合いで、田中将大は圧倒的な投球内容を見せた

 150キロを超えるキレのあるストレート。高校時代からの代名詞でプロに入って磨きをかけたスライダー。プロ入り後に習得し、時に140キロを超えるスプリット。1つだけでも攻略が困難な球種を自在に操り、田中は日本ハム打線に隙を与えなかった。

9回2アウト、二岡に押し出しのフォアボール

 8回も三者凡退に抑え、4点リードで迎えた9回だった。先頭の今浪隆博にツーベースを許す。ノーアウト二塁で3番・糸井嘉男。ピンチでも動じないのが、田中の大きな強みの1つ。左打者の泣き所、内角低めにスライダーを投じて、この試合10個目の三振でアウトを奪う。だが、その後、味方のエラーなどで2アウト満塁とされ、二岡に押し出しのフォアボール。あとアウト1つ、ストライク1つのところで完封を逃した。

 田中はマウンドにしゃがみこみ、しばらく立てなかった。

逆転のピンチに意地の3球連続スプリット

 視線を落とし、首をひねる。キャッチャーの嶋と投手コーチがマウンドに歩み寄り、田中に声をかける。押し出しを許した瞬間、ピンと張っていた田中の緊張の糸は誰が見ても切れているように感じた。

 打席には、陽岱鋼。長打で同点、ホームランなら逆転される。視線を上げて短く息を吐く田中。その初球。140キロのスプリットで空振りを奪った。次に選んだのもスプリット。低めのボール球を振らせて、2球で追い込んだ。3球目。塁を埋めた走者には目も向けない。遊び球は必要ない。138キロのスプリットで空振り三振。3球連続のスプリット。二岡に押し出しを許した球種を投じたところに、田中のプライドが詰まっていた。

 9回5安打1失点で完投勝利。8回10安打4失点の斎藤に力の差を見せつけた。エースの仕事を果たし、シーズン15勝目の白星を手にした。

 だが、最後まで笑顔はなかった。

【次ページ】 斎藤との初対決について問われると

BACK 1 2 3 4 NEXT
田中将大
斎藤佑樹
東北楽天ゴールデンイーグルス
駒大苫小牧高校
早稲田実業高校

プロ野球の前後の記事

ページトップ