「まあ～、9回が悔しいですね。失点後は切り替えるも何もなかった。本当に申し訳ないです。ゼロに抑えて試合を締めたかったんですけど」

　ヒーローインタビューでも喜びより己への怒りが勝るところが、田中がプロの第一線を走り続けるゆえんだ。

斎藤との初対決について問われると

高校日本代表時代©Takuya Sugiyama

　負けず嫌いは高校時代と同じ。ただ、あの夏のつらい記憶は変わっていた。ヒーローインタビューで斎藤との初対決について問われると、田中は視線を上げて、スタンドのファンを見渡しながら答えた。

「この投げ合いはプロに入ってから注目され続けて実現した。これだけたくさんの方に見に来ていただいて、本当に幸せです」

　5年間背負ってきた宿命から解放された。