矢部　「おぉ鋭いですね（笑）。僕が思うに、サッカー選手がカメラの前でしゃべってくれたり、素を見せてくれたりするようになったのは、彼らのおかげなんですよ。ゴールデンエイジが『やべっちF.C.』に出て、一緒にボールを蹴ったり、話をしてくれたことで、下の世代の選手が『これが普通なんや』『俺も出たい』と言ってくれるようになった。

　ある時、名波さんが『俺らの世代はしゃべらなかった。でも、俺の下の世代は積極的にしゃべるようになって、今はしゃべらないといけないと選手がわかっている。そう思わせたのは、「やべっちF.C.」の凄さだ』と言ってくれたんですけど、そのキッカケを彼らは作ってくれた。ゴールデンエイジは、天才肌が集まった集団で上の世代も下の世代も実力を認めていた。だから、彼らがやっているならと下の世代が続いてくれたんです。ゴールデンエイジが番組の価値を上げてくれたと、僕は思っていますね」

一番記憶に残る企画は？

『やべっちF.C.』の魅力といえば、多彩な企画だろう。お化け企画になった「デジっち」を始め、選手との熱く楽しいトークがウリの「なべっち」、世界の選手から出題されるリフティングをクリアする「宿題」、日本のキッカーと勝負した「FK対決」など、趣向を凝らした様々な企画で番組を盛り上げ、サッカーファンだけではなく、多くの視聴者を楽しませた。

――矢部さんが一番思い出に残っているのは、どの企画ですか？

矢部　「番組の立ち上げの時、僕は『ボールを蹴りたい』と言っていたんです。そこから実現したプロ選手とのフットサル対決やリフティングの宿題が楽しかったけど、一番は中村俊輔選手とのFK対決ですね。最初は世界基準のキックを間近で見たいなっていう気持ちからスタートしたんですけど、いざやるとなると勝ちたいって思って（笑）。俊輔選手に勝ったらすごいじゃないですか。で、勝負したらまぐれで2本入ったんです。

　あくまでテレビ番組なので流す人もいるし、遊び感覚でやる人もおるけど、俊輔選手は負けた時、本気で悔しがってくれたんです。世界のキッカーに『もう1回やらせてください』と言われたんですよ。中村俊輔に本気でリベンジされたら普通に負けるやんって思ったんですけど、3回目はスコットランドに行ってやりました（笑）」

――結果は、どうなりました？

矢部　「行く前、けっこう練習をしたんです。そうしたらやり過ぎてダメになっちゃって（苦笑）。何よりびっくりしたのは、俊輔選手がどんどんテレビ慣れしていっているということ。最初はテレビやし、顔の近くで撮られて緊張していたと思うんです。そういう意味でも、1回目、2回目の対決は僕のホームやったんです。でも、スコットランドでは、テレビにも慣れてきたし、FKの精度も上がっている。これは絶対に勝たれへんわって思いました（笑）

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