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「やべっちF.C.」終了から2カ月…矢部浩之が語る「本音の『あかん、やめたくない』がポロっと」
posted2020/11/29 11:02
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph by
Shigeki Yamamoto
9月に最終回を迎えた『やべっちF.C.』のラスト、矢部浩之さんが思わず漏らした言葉に感情を揺さぶられた人は多かったのではないだろうか。2002年の番組開始以来、18年半、どんなに悔しいことも悲しいことも感情をかみ殺して冷静に伝える仕事を全うし続けてきた矢部さんだが、最後の最後に万感の思いが込み上げてきたようだった。どんな心境であの言葉を発したのだろうか。
動画配信サービスDAZNでの新番組『やべっちスタジアム』のスタートを前に、その思いを聞いた。(全2回の1回目/#2へ)
――「あかん、やめたくない」というのは、矢部さんの心の叫びのように聞こえました。
矢部 「本音が出ましたね(苦笑)。あれ、自分らしくないんですよ。性格的に本心や自分の感情を素直に表すことがあまりないですし、本業(MC)も進行しながら誰かにふるポジションなので自分のことをいうことってほとんどないんです。
あの時は、日本サッカー界のこれまでを振り返るVTRを見ながら『日本代表がW杯でベスト16以上に行くところが見たい』とかいろんな感情が溢れてきて、離れるのがイヤやなって……。小3の時から生活にサッカーがあったので、当たり前のことがなくなるのってやっぱりすごく寂しいんですよ。それに、辞める整理が、自分の中でまだできていなかったんやと思いますね。それでポロッと(本音が)」
鄭大世選手から届いた“熱すぎるメッセージ”
『やべっちF.C』の終了というアナウンスが流れた後、予想だにしなかったことが起こった。サッカーファンはもちろん、現役選手から「やめないでほしい」という声がSNSを通して拡散していった。そして、その声は大きなうねりになっていったのだ。
――番組終了が告知された際、現役選手から「番組終わらせないでほしい」「寂しい」という声が上がりました。
矢部 「ありがたいことですよね。サッカーファンがSNSで声を上げるのは想像ついたんですけど、現役サッカー選手から『えぇーイヤや』という声が上がったのは驚きました。
特に鄭大世選手(新潟)とかスゴかったです(笑)。『矢部さん、なんとかならないですか。僕は代表になるのが夢でしたが、やべっちに出るのも夢なんで。やべっちがなくなるとサッカー人気なくなっちゃうじゃないですか』とすごくストレートに気持ちをぶつけてくれて……。他にもいろんな選手が連絡をくれて、ここまで思ってくれるんやって思うと感動しましたね」
プロサッカー選手の矢部さんに対する信頼度は別格だったと思う。
試合後のミックスゾーン、他メディアに対しては素通りする選手がいる中、矢部さんの前では多くの選手が足を止めて、楽しそうにコミュニケーションを取っているのをよく見かけた。
矢部 「あれは、ズルいわってなるよね(苦笑)」
矢部さんはそう語るが、それは別に有名人だからということではない。その現象こそが選手の矢部さんに対する気持ちの表れであり、信頼の証だった。