プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人の「どうしようもない力負け」を演出した鷹エース・千賀滉大 坂本、岡本に植え付けた“残像”とは
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2020/11/26 11:45
初戦に先発して7回無失点に抑えた千賀。シリーズ全体に影響を及ぼす見事な投球だった
シリーズ通算121打数16安打の打率1割3分2厘
敗因を考える。
もちろんすべてにおいてソフトバンクが巨人を上回ったという事実は隠し難い。ただその中でもやはり第一に挙がるのは、打てなかった、打線がソフトバンクの投手陣に手も足も出なかったということなのである。
「なかなか攻撃が機能しなかったというところですね。0点、2点、0点、1点か。やっぱり攻撃型のチームという中で攻撃がなかなか機能しなかった」
シリーズを終えて原辰徳監督が真っ先に語ったのも、打撃陣の不振だった。
出てくる投手、出てくる投手が150kmを超えるソフトバンクのパワーピッチャーたちに力でねじ伏せられた。シリーズ通算121打数16安打の打率1割3分2厘は、これまで日本シリーズに出場したチームの最低打率を記録している。
坂本、岡本、丸が機能不全に
吉川尚輝内野手と松原聖弥外野手の1、2番の出塁率の低さ。ケガから復帰して即先発起用された亀井善行外野手など、原監督の期待通りに活躍できなかった選手はいる。
だが、やっぱりこのチームは坂本勇人内野手、岡本和真内野手に丸佳浩外野手のクリーンアップだ。苦しいときにはこの3人の誰かが活路を開き、そこからチームが勢いをつけてきたはずだ。逆にその3人がほぼ完璧に抑え込まれてしまえば、巨人打線は機能不全に陥る。
そしてその機能不全を引き起こすボタンを押したのは、初戦に先発した千賀だったのである。
実は去年も同じだった。
昨年もシリーズ第1戦に先発した千賀は坂本と丸の内角を徹底的に抉って、その残像を利用した形で2人をシリーズで沈黙させた。