岡本の頭にインプットされた内角攻め

　同じように今年は千賀の徹底した内角攻めで崩されていったのが、本塁打と打点の2冠を提げてシリーズに臨んだ4番の岡本だった。

　第1打席。

　いきなり154kmのストレートで内角を抉って岡本のバットをへし折っての捕邪飛。

バットをへし折られた岡本　(C)Naoya Sanuki

　第2打席は岡本がファウルで粘って、最終的には四球を与えたが、全部で8球を投げた中で、3球目の外角低めへのカットボール以外は全てインコースに集めて攻め立てた。

「インコースを突いてくる」

　この2打席、特に第1打席で完璧に詰まらされてバットをへし折られた印象は強烈で、岡本の頭にはこの意識がインプットされたはずだ。その結果、この試合でも6回の第3打席では初球に内角のフォークを見せて、あとはほぼ外一辺倒の配球で一邪飛に打ちとった。

坂本にも“残像”を利用

　そして第2戦以降もソフトバンクの投手陣は、千賀が植え付けた内角のイメージを利用しながら、岡本を抑え込んでいく。

　しかも出てくる投手、出てくる投手、球が速い。岡本はどうしても第1打席植え付けられたインコースの真っ直ぐへの対応を意識する。そうなった結果、岡本は悪いときの癖で開きが早くなって完全に崩された。

　シリーズ通算13打数1安打の打率7分7厘。この数字の背景には明らかに千賀の影があったのだ。

　そして千賀が残像を利用したのは、この岡本だけではなかった。

　昨年のシリーズ。千賀は坂本と対した第1打席で投げた6球中5球がインコースへの真っ直ぐで二飛に打ち取っている。第2打席でも真っ直ぐで内角を抉って、バッテリーがインコースへ突っ込んでくることを意識させて、その配球を利用しながらソフトバンクの投手陣は坂本を抑え込んでいった。

　坂本にとってはその残像が残っての今年の日本シリーズだったはずなのである。

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