「後半になって、相手がメンバーを代えてきて、ボールの回し方だったり、やり方を変えてきた。4番（エドソン・アルバレス）が、マンツーマン的に僕を見るようになった」

　日本の攻撃の起点となっていた鎌田大地はその時の変化をこう振り返った。そして、原口は語る。

「僕らがイケると思っていた矢先にメキシコはすごくいい修正をしてきた。したたかで、やはり強いチームだった」

　メキシコは勢いそのままに63分にラウール・ヒメネスが得点を決め、68分にはイルビング・ロサーノが追加点をマークし、そのまま逃げ切った。

「ほとんどチャンスを作らせていなかったなかで、1チャンスをものにされてしまった。多分ヒメネスはあと1プレーで交代していたんじゃないかな。ベンチの選手がすでにタッチライン際でスタンバイしていたので。だからその最後の1プレーを粘れていればと思うと、個人的にもチームとしても悔しい。

　メキシコは（日本との対戦前に戦った）韓国戦でも短い時間で連続得点している。そのことは頭のなかにイメージがあったけれど、失点して前がかりになったところで、奪われてカウンターを食らってしまった。思えば、1点目が入る前から押し込まれていたので、どこかでゲームを切るプレーも必要だったなと感じます」

　吉田が話す言葉には、「わかっていたのに防げなかった」という後悔がにじむ。

メキシコが「日本を上回った」という現実

　W杯カタール大会へ向けた大陸予選もままならない状況だが、本来地区予選があれば、対戦できない他大陸の強豪との試合は、非常に有意義なものだっただろう。それはメキシコも同様だ。けれど、相手の勢いを削ぐために早々に軌道変更したメキシコと、日本とではやはり「対応力」や「修正力」の差があった。それは選手だけでなく、続々とメンバーを変更する森保監督の采配は、メキシコを攻略するまでには至らなかった。

前半は有利に試合を進めながら、後半はメキシコに主導権を握られてしまった森保J　©JFA

　それは指揮官が描く戦略を表現する能力が選手になかったのか？　それとも指揮官の描く対応に効果がなかったのか？　その両方が原因なのか？　もしくは監督には、相手を攻略し勝利する以上に選手をテストしたいという想いが強かったのか？　

　答えはわからないが、いち早く、システムを変更して、流れを引き寄せ、自らの強みが発揮できる状況を作り出したメキシコの修正力の高さに日本は太刀打ちできなかった。対戦相手を封じる策やその準備、そして選手の能力の違いでメキシコが日本を上回った現実だけは変わらない。

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