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巨人が「ソフトバンクに4連敗」の影に怯えている? エース菅野智之が“ねじ伏せられなかった”ワケ
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/11/22 12:15
栗原に本塁打と二塁打2本で4打点を許した菅野。1人の打者にこれほど打たれるのは珍しい
斎藤雅樹を軸に槙原寛己、桑田真澄の3本柱がいたが……
藤田元司監督が率いたこの年の巨人は、前年には近鉄を破って日本一に輝くなど決して弱いチームではなかった。
エースの斎藤雅樹を軸に槙原寛己、桑田真澄の3本柱を中心とした2桁勝利投手5人を輩出した強力投手陣。打線も4番の原辰徳を中心にウォーレン・クロマティ、岡崎郁に駒田徳広、川相昌弘に篠塚利夫(現・和典)ら錚々たるメンバーでペナントレースは圧勝。9月8日に史上最速で優勝を決めて日本シリーズに臨んでいた。
一方の西武は、まさに黄金時代の真っ只中。前年こそ近鉄の“いてまえ打線”に苦杯を舐めたが、85年からリーグ4連覇して、そのうち3度の日本一と最強を誇った。
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勝ち方を知っているチームというところは、いまのソフトバンクにつながるものがあったかもしれない。もちろん個々の選手を見ても秋山幸二、清原和博、オレステス・デストラーデに石毛宏典、辻発彦、伊東勤らを擁した強力打線に、投手陣もエースの渡辺久信に若かりし工藤公康、さらには郭泰源に潮崎哲也らを揃えて選手層の厚さを誇るチームでもあった。
逆に自分のピッチングを見失うことになった
その西武に挑んだ巨人だが、優勝から日本シリーズの間に相手を研究し尽くしたことで、逆に相手が大きくなってしまった。
特に投手陣は清原の秋山の、デストラーデのホットスポットを徹底的に頭に入れたことで、「そこには投げてはいけない」と逆に自分のピッチングを見失うことになってしまった。
その結果、初戦に槙原がデストラーデに強烈な本塁打を浴びて落とすと、失ったシリーズの流れを1度も取り戻すことなく4連敗で敗れ去った。
西武を巨大化し過ぎたことで自滅した——それが90年の屈辱の4連敗の背景だとすれば、強いソフトバンクという去年のイメージをどう払拭して戦いに臨めるか。
巨人にとっては去年の4連敗の影をどう消し去って、自分たちの野球ができるかが勝負のはずなのだ。