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“悪川君”が覚醒! 原辰徳監督も「救ってくれた」と最敬礼、吉川尚輝のきらめく野球センス
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/09/25 11:50
9月22日の広島戦で、サヨナラ打を放ち、ナインから祝福を受け笑顔の巨人・吉川尚輝(右から2人目)
「抱きしめてやりたい」と指揮官を興奮させたが……
今年の巨人で原監督が坂本勇人内野手、岡本和真内野手、そして丸佳浩外野手のトリオに加えて野手のコアとなると期待した最後の1ピースが、この吉川尚輝のはずだった。
「彼にはスピードがある。それにバッティングでも守備でも、球あしらいにセンスがある。吉川には今年は1番として大いに期待を持っている」
キャンプでこう高評価をして、周囲もそうなるものと思い込んでいた。
そして阪神とのオープニングゲームでは、いきなり逆転の1号2ランを放って「抱きしめてやりたい」と指揮官を興奮させたはずだった。
吉川が先発から外れ、猫の目打線が始まった
ところが、である。
翌日の第2戦で左腕・岩貞祐太投手の前に二ゴロ、遊ゴロ併殺打、空振り三振と倒れると、途端に監督の視線が冷たくなってしまった。そして第3戦では先発からはずれ、そこから巨人の今季の猫の目打線が始まった。
当初の構想通りに吉川が1番に座っていれば、あれほど毎日、打線を組み換えることもなかったのかもしれない。逆に言えば吉川は、それくらいに今年の原構想のカギを握る選手の1人であった訳である。
それがわずか3試合で崩れたのだ。
デビュー以来持病の腰痛が、この選手の大成を阻んできていた。今年もまた肉体的な問題なのか。それとも気づかぬところで何か大きなミスをやらかしたのか。気になって先発を外れた直後に原監督に問うたその答えはこうだった。
「体は何も問題はない。尚輝も毎日、出たくてうずうずしていると思うよ。でもね、これは私自身の反省だな。我々が吉川尚輝という選手を、少し高みに置きすぎたのかもしれない」
粘っても監督から、それ以上の具体的な話は何も出てこなかった。