プロ野球亭日乗BACK NUMBER
“悪川君”が覚醒! 原辰徳監督も「救ってくれた」と最敬礼、吉川尚輝のきらめく野球センス
posted2020/09/25 11:50
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
KYODO
センスが光った。
「見事でしたね。監督を救ってくれた。ファウルで凌いでくれたのは監督として感謝しています」
巨人・原辰徳監督がこう最敬礼して振り返ったのは、9月21日の広島戦、4回の巨人攻撃で飛び出したワンプレーだった。
この回先頭の中島宏之内野手のソロ本塁打で4対2として、なお内野安打と敵失、送りバントで作った1死三塁のチャンスだった。
アクロバティックな動きで身を投げ出した
打席の吉川尚輝内野手のカウントが1ボール1ストライクとなると、三塁コーチャーの後藤孝志野手総合コーチの手が動いた。そしてマウンドの九里亜蓮投手がモーションを起こすと同時に、三塁走者の松原聖也外野手が猛然とスタートを切った。
スクイズだ。
だが広島バッテリーは巨人の策を読んでいたように、九里の投球は外角低めに大きく逃げていくシュート。完全なボール球に巨人ベンチの策が失敗に終わると思われたその瞬間、救ったのが吉川だった。
文字通りに飛びついた。
アクロバティックな動きで身を投げ出してバットを差し出し、何とかその先端に143kmのボールを当てた。
この反応、この動き。
まさにそこに吉川のセンスが光るワンプレーで、サインを出した原監督を救ったのだ。そしてさらにはカウント2ボール2ストライクからの5球目を右前に運んで、ゲームを決める追加点を奪ってみせた。