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内田篤人が引退を告げ、盟友・遠藤康が引き留めた最後の“さしメシ”「せっかくならデザート頼もうよ」
text by
池田博一Hirokazu Ikeda
photograph byAFLO
posted2020/09/16 11:50
内田は2006年に、遠藤は2007年に加入。紅白戦ではマッチアップする機会も多かった。
「今さら、2人でご飯は恥ずかしいよ」
2人がひと通り話を終えたとき、注文した料理がテーブルに並んだ。遠藤も内田も食べるのが早い。どちらも早々に出された料理をきれいに平らげた。
「じゃあ、帰ろうか」
そう促す内田に、遠藤は引き下がった。
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「せっかくだからもうちょっとゆっくりしようよ、と思ってデザートを頼むことにして引き止めたんだけど、別に話すこともない。あ、全然うっちーのことは嫌じゃないんだよ。他に誰かがいるときは、いろいろと話すからすごく楽しい。家族同士で会ったときも、たくさん話をするし、ふざけあったりする。でも、2人はね(笑)。これまでいっぱい話してきたから、今さら話すことなんてないんだよなあ」
内田に同じことを聞いても、同じ答えが返ってきた。
「今さら、2人でご飯は恥ずかしいよ」
それでもどこかつながっている。男同士ってそんなもん。お互い家庭を持ち、30歳を超え、改まって話す機会はなくなった。でも、何かあったらやっぱり顔を見て伝えたい。必要以上の会話は交わさなくても、そこには2人だけの絆がある。
「今は2人っきりになれば、お互いすぐ携帯をいじってる(笑)。うっちーから引退を聞いたときも、最後はいつもと同じ。でも、これが10年後か、20年後に何か変わるのかなあと考えてみると、おもしろいよね。もしかしたら、おじさんになったらずっと一緒にいるようになっているかもしれない。また昔みたいに鹿島神宮を一緒に歩いているかもしれないよ」
遠藤は屈託のない笑みを浮かべた。いつもの大きな笑い声とともに。