Jをめぐる冒険BACK NUMBER
Jを沸かせた“岡山劇場”の岡山一成は今何を? スペイン人女性監督からの指摘と絆、指導者のリアル
posted2020/09/16 17:00
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Atsushi Iio
イビチャ・オシム監督が「我々のホーム」と愛した市原臨海競技場(ゼットエーオリプリスタジアム)に、絶叫が響く。
マスク越しだったが、無観客試合のために内容がはっきりと聞き取れる。
「ここからだぞ! ここから!」
「全然オーケー! 大丈夫! 大丈夫!」
「ゴー! ゴー! ゴー! ナイス!」
コーチングエリアの最前線で仁王立ちとなり、選手たちを叱咤激励していた指揮官は、立て続けに迎えたチャンスを相手GKにことごとく防がれると、まるで絵に描いたように、膝から崩れ落ちた。
監督がそんな風にオーバーアクションだから、スタンドからの視線はピッチ上のプレーより、ついついベンチ前の彼に向かってしまう。
ああ、監督になっても、一流のエンターテイナーなんだな――。
関東1部リーグ(J5に相当)を戦うVONDS市原の岡山一成監督を見て、そう思わずにはいられなかった。
日韓合わせて10クラブを渡り歩いた後に
'97年8月の横浜マリノス入団を皮切りに、大宮アルディージャ、セレッソ大阪、川崎フロンターレ、アビスパ福岡、柏レイソル、ベガルタ仙台、浦項スティーラース、コンサドーレ札幌、奈良クラブと、日韓合わせて10クラブを渡り歩き、FW、DFとして奮闘した。キャリア半ば以降はハンドマイクを片手に“岡山劇場”を展開し、ファン・サポーターを沸かせてきた。
長く、熱い現役時代を過ごし、「心残りがある」「指導者には向いていない」と感じていた男は、なぜ、指導者への道を歩み出したのか――。