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メッシのバルサ急転残留=“仮面夫婦”継続 「走らない天才」脱却はできるのか
posted2020/09/09 08:00
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
リオネル・メッシとバルセロナ。双方にとって一番幸せな選択は、「別れ」でしかなかったように思う。
メッシの心は、すでにカタルーニャの地から離れていた。みずからの想いを口にすることなく、内容証明郵便を送りつけて退団の意向を伝えたそのやり方が、なによりの証拠だった。
かたやバルサの首脳陣にも、もはや「クラブ以上の存在」と化してしまったメッシをつなぎ留めておく、強い動機はなかったはずだ。バイエルン・ミュンヘンに完全に息の根を止められ、12年ぶりの無冠で幕を閉じた昨シーズンの失態も、むしろ“王様抜きのチーム”を作って出直す、良いきっかけだと捉えていたかもしれない。
サポーターも別れを受け入れていた
お互いの気持ちがすっかり離れてしまったのだから、ここからヨリを戻しても憎しみが深まるばかりだ。疑念と不満を抱えながら仮面夫婦を演じるメリットなど、どこにもない。
だとすれば、メッシはフリーでの移籍にこだわらず、クラブも7億ユーロ(約880億円)と言われる天文学的な違約金など求めず、妥当な金額で折り合いをつけ、将来に禍根を残さない形で手打ちにすればよかったはずだ。
ネイマールをパリ・サンジェルマンへ売却した時の移籍金がおよそ260億円だから、それをひとつの目安に、長年の功労者に退団の道筋をつけてやることもできただろう。
わずか13歳の少年が、史上最高のフットボーラーへと上り詰めていく過程を見守り続けたバルサ・サポーターの大多数も、メッシの決断を悲しむ一方で、「やむを得ない」とその別れを受け入れてもいた。バルサ以外で、ラ・リーガ以外でプレーするメッシの姿を見てみたいと、そんな興味もあったかもしれない。