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メッシのバルサ急転残留=“仮面夫婦”継続 「走らない天才」脱却はできるのか 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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posted2020/09/09 08:00

メッシのバルサ急転残留=“仮面夫婦”継続 「走らない天才」脱却はできるのか<Number Web> photograph by Getty Images

メッシはバルセロナにとって永遠の宝である。だからこそ、今回の件では“キレイに”別れてほしかった。そう思う人は世界中に多いはず。

泥沼離婚のような別れは絶対に……

 逆にメッシの立場からすると、来年6月の契約満了をもって、今度こそ自由に移籍先を選べる権利を得たことになる。

 また3月の会長選で、OBであるシャビやカルレス・プジョルのフロント入りを匂わすビクトル・フォントが選出されれば、その時は改めて身の振り方を考えればいい。あるいはそこで、「生涯バルサ」を宣言することだってできる。

 一度はアイドルとの別れを覚悟したサポーターも、今回のゴタゴタなどすぐに忘れるだろう。悪いのはすべてバルトメウなのだ。

 いつか、メッシが本当にバルサを去る時。それは泥沼離婚のような別れではあってはならない。たとえばアンドレス・イニエスタがそうであったように、その終幕が拍手と涙とノスタルジーに満ち溢れたものになることを、彼らは願ってやまないのだ。

暗黒時代へと足を踏み入れる危険が

 ただし──。その間のバルサが、数々の栄光に包まれる保証はどこにもない。むしろ、暗黒の時代へと足を踏み入れる危険さえあるだろう。

 メッシの残留によって、バルサは大刷新へと舵を切る大きなチャンスを逃した。スアレス、イバン・ラキティッチ、アルトゥーロ・ビダルといったベテランを放出し、高齢化に歯止めをかけたとしても、メッシという絶対君主がいるかぎり、バルサは停滞から抜け出せない。少なくとも、チャンピオンズリーグ(CL)のタイトル奪還は叶わないのではないか。

 最先端のフットボールは、昨シーズンのCLを制したバイエルンが示したように、「ハイスピード、ハイプレッシャー、フルパワー」が主流だ。90分間、誰一人サボらず、ブルドーザーが時速100kmで駆け抜けるようなフットボールを維持できなければ、ヨーロッパの頂点には立てない。

「走らないメッシ」がいては、それは不可能だ。彼らはその現実を、まさしくバイエルンに8つのゴールを叩き込まれ、身をもって思い知らされたはずなのだ。

 だから、バルトメウがもう少し賢明だったら、いや、バルサの未来を少しでも真剣に考えていたなら、退団を希望したメッシに敬意をもって花道を用意し、新しいサイクルへといち早く足を踏み出せてもいただろう。

【次ページ】 アンス、プッチらに現代風アレンジを

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リオネル・メッシ
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