ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
マンチェスター・シティ発の世界戦略。
B・マーウッドのサッカービジネス論。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byCFG
posted2020/09/01 18:00
世界中に散らばるクラブチームのマネジメントに関わるCFGグローバルフットボール部門のディレクター、ブライアン・マーウッド。
「私の仕事は継続性とメソドロジーの発展を見守ること」
――あなたは具体的に何をしていますか?
「2009年に私はシティのスポーティングディレクターに就任した。もともとはプロ選手で、引退後はプロサッカー協会のチェアマンになった。その後ナイキに行き、フットボールスポーツマーケティングのUK部門で仕事をした。ナイキがサッカーへの参入を本格的に始めたときで、マネジメントの多くをこのときに学んだ。そしてシティからオファーを受け、今日は国際部門のマネジングディレクターとして活動している。グループが拡大した今、私の仕事は継続性とメソドロジーの発展を見守ることだ。世界に散らばるグループのクラブに、最善の環境を用意する。選手・監督のリクルートやメディカルスポーツサイエンスなど、様々な分野での活動を通じてクラブをサポートしたいと考えている」
――現在、世界で9つのクラブを傘下に収めていますが、そのすべての統括をあなたがおこない、責任者になっているのでしょうか?
「私の仕事はサッカー面に限られる。ビジネスやマーケティング、コミュニケーションについては別の人間がいる。マンチェスターで働くのは中心となるグループで、そこから世界中のクラブをサポートしている。私の仕事はフットボール面でのサポートで、それぞれのクラブのスポーティングディレクターとは親密な関係にある」
「戻るには何年もかかるだろう」
――ここまでの活動をどう評価していますか?
「今は誰にとっても難しい時期だ。大きなインパクトをビジネスで受けたのは、CFGだけではない。残念ながら多くの生命も失われた。世界が不確実さで覆われ誰もが神経過敏になっている。これがどんなインパクトをグループにもたらすかを明らかにしたい。
ただ、この難しい時期にも、われわれは自分たちのやり方を推し進めて、ほとんどの分野で進化を遂げた。そしてクラブは試合を再開した。観客がほとんどいない状況は理想的ではないが、サッカーは多くの人々を結びつけるスポーツであり、人々に希望と喜びを与える。再開できたのは素晴らしいことだ。
まだまだノーマルな状態には戻っていない。戻るには何年もかかるだろう。時間をかけてハードワークを続けて、護るべきものを護る。大事なのはそれぞれの国がウィルスに対して異なる反応を示したのを、サッカーを通じて学べたことだ。マンチェスターやモンテビデオ、ニューヨーク、横浜やジローナで、コロナ禍にどう対処したか、何が良くて何が悪かったのか……。知識ではなく知性で、それぞれのクラブが困難を乗り越えようとした。CFGの結びつきのなかで、互いに助け合いながらここまでやってきた。
だが、まだわからないことはたくさんあり、ビジネス面でのインパクトがどれほどなのかも計れない。ネガティブなインパクトから誰も逃れられないだろう」